コート場の帝王 ６【○○○！！】

帝王 番外編３ ページ43

『今年もごめん』

縁下「いいよ別に」

成田「俺たち同期でしょ」

田中「まぁしゃーねぇわ」






結局、4つの紙袋では収まりきらなかったチョコをAの家に共に運んでくれた2年生

しっかり今年もパンッパンになったエナメル


それも含めると、量は去年の倍になった







『家、あがってけよ』

縁下「今日はいいよ」

木下「A疲れんだろ？」

西谷「腹減ったー！」

田中「肉まんだけじゃ足りぬ…」

縁下「他もこんなんだし」

『わかった、気ぃ付けて帰れよ』







手伝ってくれた彼らは「潔子さんに貰えてねぇ！」「いいじゃん一応女子からのだよ」「回しモンだろ！」と去っていく時も騒がしい






『…ふぅ』





パタン、と玄関を閉め ため息を着いた


足元に置いた山積みのチョコの紙袋を見下ろす



同期が多少持ち帰ってくれたので、貰った分からは少なくなった

折角自分の為に作ってくれたが申し訳ないし、田中にもそんな彼女達の「回しモンチョコ」で悪い




それでも捨てるよかマシだろ？







『残りはアイツにやるか』











・











雨「んもう！こんな時しか帰ってこないんだから！」

『ごめんって』

雨「ふふ、いいよ〜」






父、母、そして弟の雨が住む実家


毎年バレンタインで貰ったチョコは雨に処理をしてもらっている


Aとは違って甘い物が大好きな雨


この点も、兄と正反対の部分な一つである







『これ、今年もお願い』

雨「は〜い」

『サンキュ』

雨「…にしても妬けちゃうなぁ、兄さんに女のコがチョコいっぱい渡してくるなんて」






すっ、と深海を思わせる暗い蒼眼


ニコニコと向日葵のような笑顔を見せていたのに、こうして偶に冷酷な表情を浮かべる



あぁ、この点だけは兄であるAと血が繋がっているのだなと気付かされる








『オレに言うなよ』

雨「それもそうだねっ」

『じゃあまた来る』







用件が済めばすぐに帰ろうとする紅眼の兄


その背中に「気を付けてね！」と声をかけると、ヒラヒラと軽く手を振って去っていった





雨「…」




去年よりも増えたチョコ

何処の馬の骨とも知らない女達が、大切な兄に作ってきたプレゼント





雨「…ふふっ」







可哀想に

君らの想い人には届かず、この腹黒い胃に消えていくのだ


手間も、暇も、恋心も…






雨「全て僕の中で溶けて消えろ」






その時の雨の顔は、皮肉にも正反対の筈の兄とそっくりであった。

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