コート場の帝王 ６【○○○！！】

帝王 番外編２ ページ42

『…はぁ』




日向「…なんかAさんめちゃくちゃ疲れてね？」

影山「お前見てないのか」

日向「なんだよ」

影山「Aさん、今日チョコと告白の連続で休んでる時間がねぇんだよ」







部室で着替える烏野高校排球部


その中でとびっきり美しい青年がいるのだが、その端正な顔立ちは何処かやつれている



というのも、つい先程までチョコを渡しに来た女子に囲まれ、ようやく部室に辿り着いたのだ


教室では「帝人君いますか？」と呼び出しが止まらず、部活に来る際も「これどうぞっ」と苦手な糖分を持たされる





…あぁ、少し言い方が悪くなってしまったね

しかし許して欲しい

苦手なものを無理矢理渡されているのだ



でもその苛立ちさえも超え、最早諦めムードになってしまっている








縁下「A」

『…ん』

縁下「帰り、肉まん食べよ」

田中「俺奢るぜ」

『…ありがと』

田中「お前、ホント大丈夫かよ」







普段凛々しく、背筋がしゃんと伸びているあのAがこんなにもしょんもり…と項垂れている


今まで「此奴ばっかチョコ貰えてズルい！」と僻んでいた田中だったが、流石にこの様子を見ると同情した




モテすぎる、というのもなかなか辛いのだ








月島「…」

山口「ツッキー、いつ渡すの？」

月島「……べつに」







2年生に珍しく沈んでいる事を心配されている、恋慕の情を抱いた相手


チョコだけでなく甘い物全般苦手な彼に、部活が終わったら柄にもなくプレゼントしようと思っていた



1人でチョコを買いに行くのは恥ずかしくて態々山口にも着いてきてもらって選んだ代物



しかし、あの様子を見て何だか渡す勇気が無くなってきた







月島「…」






ベリー系にして甘酸っぱいものを選んだ


砂糖も少なめのやつで、後味も残ることなく爽やかだと聞きその瞬間購入を決意した物



彼を想い、彼の為だけに選んだチョコ









縁下「もう、少しの間チョコは勘弁だね」

『…おう』

月島「っ」








聞こえてしまったその会話


…あぁ、ならばもう渡せられないでなないか

何日も前から考え、ドキドキしながら初めて誰かのために買ったチョコ





それは渡す相手に届く前に消えようとしていた。

帝王 番外編３→←帝王 番外編１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す