コート場の帝王 ６【○○○！！】

帝王 205 ページ15

黒尾「…充電、させて」

『…』







キュッ…と力なく黒尾が腕を強めれば、言いたかった言葉も消えていく

暗い教室、今この状態を見られれば2人きりで何やってるんだと言われるだろう


しかしAは抱き締めてくる黒尾を静かに受け入れる







黒尾「春高、絶対来いよ」

『はい』

黒尾「…負けたら許さねぇ」

『ふふっ、重いですね』

黒尾「思ってもねぇ癖に」







首筋に掠る彼のクセのある髪がくすぐったい



思い出すのは初めて練習試合をしたあの日、帰りに彼は「充電」と言っていきなり抱き締めてきた


今日も同じ

あの日と全く一緒の制汗剤の香りが鼻を燻る



そう遠くない事なのに懐かしく感じた







『黒尾さん』

黒尾「…ん？」


『全国では、負けません』

黒尾「！…全国でも、負けません」







背中に回された好いた彼の腕に驚きつつも、そっと目を閉じ温もりを感じる


どうか「ゴミ捨て場の決戦」が叶うようにと、信じもしない神様に願ってみたりした。









・









縁下「A行くよ」

『おう』








自分たちの荷物は全てバスに運んだ


今回の合宿も1番遠くから参加しに来ている烏野高校は、他よりも先に帰る



ボールケースを肩にかけたAは、同じくボールケースを持つ縁下の後を追う








？「Aくん！」

『？はい』



烏野「「？」」







すると誰かに名前を呼ばれて足を止められる


振り返れば階段上から手を振る、彼女がいるかどうか一生懸命聞いてきた乙女が







雀田「頑張れ雪絵っ」

白福「っ、その…ッ///」






その隣にはこの甘酸っぱい恋を応援する雀田の姿

彼女に背中を押された白福は周りの視線が一身に集まっているのを感じる


そりゃそうだ、帰ろうとする彼を大声で呼び止めたのだから


恥ずかしい、恥ずかしい





それでも言っただろう、“戦う乙女は強いのだ”と










白福「お、応援してますっ！///」









青い空に広がる白福の声援


皆が驚いて彼女を見つめる中、Aも目を丸くしてそれを見つめていた



しかし直ぐに「ははっ」と目元を柔らかくして笑うと、顔を真っ赤にした白福に向けて拳を突き上げる










『ありがとう！』




白福「っ！///」








真っ白の歯をみせ、太陽のように眩しい笑顔で返事を返してくれたA


白福は目の前がキラキラと光り輝いた気がした





青春は始まったばかり









ー夏休み合宿・全日程終了ー

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