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友達演じたり家族演じたり、距離感が掴めなくて大変だねって憐れむみたいな言い方をされた。
だから別に演じてないって言った。友達だし家族だ。こいつはそういう複雑な思考回路が持てないんだ、可哀想な奴。
「そんなにAが心配なら俺から取り返せばいい話じゃないか」
「はぁ?だからAをモノ扱いすんなって言ってんの。誰とどう時間を過ごそうがあいつの勝手だろ?」
「皆が皆君みたいに他人の気持ち第一で生きていられるわけじゃないんだよ。俺は自分の好きなように動く。鬼を殺すためにAの力が必要なら使わない手はない」
「へーぇ情けないねぇ男のくせに女の子の一人も守れないなんて笑っちゃうね。意気地無し」
「ちょっちょっと二人とも静かに!伊之助が起きるだろ!善逸も傷に響く。……もうよさないか」
思い出したみたいに骨の折れている部分が傷んで、仕方なくを装って布団を被り直した。
単に気が合わない奴ってだけなら無視するけど、Aが絡むと無性にイライラする。
「……何なんだよ」
イライラの原因がわからない自分にイライラ。悪循環。
さっきAの腕の中にいた温もりを思い出して、小さくため息をついた。
それから二週間後。
日が沈んでから数時間たった頃、増援としてある山の麓に駆けつけた。
状況を掴もうと辺りを見回すと、たくさんの隊士の中に見覚えのある背中を見つける。
(A、ここにいたのか……)
怪我は無さそうでよかった、と思った矢先に、その背後から鬼が襲いかかるところを目撃した。
考えるより先に足が動く。
ドシャッと鬼の頸が足元に転がるのを見て、Aは振り返って反射的に「助かった、ありが……」とまで言いかけた。
「善逸……!」
なーんの計画も立ててないからそんな目を輝かされても濁すことしか出来ないんだけど……。
「前見て!まだ終わってない」
「うん!」
「ちょっと、なんでそんな嬉しそうなんだよ」
「だって、……」
言葉がぶつ切りになる。
すぐさま別の鬼が襲いかかってきたから、その時の会話はそこで途切れてしまった。
情報の伝達が早かったおかげで、増援が来てから隊士の負傷は最小限に抑えられた。Aも腕を少し切ったくらいで大した怪我じゃないみたいだった。
まだ薄暗い夜明けの空の中を鎹鴉が飛んでいくのが見える。
「A」
「?」
炭治郎たちには先に屋敷に戻ってもらって、俺は道中をAと帰る事にした。
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作者名:かいぶん | 作成日時:2020年2月29日 17時