7 ページ7
そう。彼には任務が一緒になった時、バレるという形で私の特異体質を知った。信頼してない人には知られたくなかったが、一部始終を見られてしまったものは仕方がない。
この部屋にいるうちは静かにしなきゃいけなくて、「静かに」って患者も言ってた。なのにその本人が急に布団から這い出したかと思うと「うっっざ！！！」と全集中の呼吸を使って叫んだ。
「ぬわぁにが得意分野だ！！人の事道具扱いしてんじゃねぇぞ！！いいかAは毒を分解できるものもあるってだけだ！そういう毒もあるってだけだ！！分解すんのも命懸けなんだよ！！お前それでもし出来なかったら責任取れんの！？あぁ！？何嬉々として毒食わせようとしてんだよ馬鹿なのォ！？」
読むのも大変な長ゼリフを一息で言い切ったけれども、全集中の呼吸を使ってだから本人に息切れの兆候は見られない。こんなとこで使わなくていいとひたすら思った。
こんな時うるさい！って騒ぎ出しそうな伊之助だけど、いつものように静かに横になったまま。一番の重症患者は彼なのかもしれない。
「……見た感じ大怪我してるみたいだけど、随分元気だね……友達？」
「私の弟」
「だッから弟じゃねーよ！！いっっ」
「善逸、肋骨折れてるのに呼吸使っちゃダメだ」
いつ口を挟もうか機会を伺っていた炭治郎に宥められ、痛む横腹をさする。私はそんな善逸に駆け寄ると、怪我の部分を避けてぎゅっと両手で抱きつき頭を撫でた。
「なっ……」
「よしよし」
言霊とまでは言わないけれど、言っていたら本当に弟のように思えてきて可愛らしく感じる。
「や、め、ろ……ふざけてるんじゃないのよ俺は……」
「いいなぁ。A、俺にもやってよそれ」
「ふざっっけんな誰がお前にやるかっ！！」
「うっ」
私の肩を掴んで引き離さんとしていた善逸の両手が私の首をホールドする。状況が状況とはいえ抱きつかれたのは初めてで、動揺して咄嗟に「何すんのよ！！」と怪我で痛々しい腹に拳をぶち込んだ。
いたたまれなくなって「早く行くよ！」と芳乃に一声かけて部屋を出ていく。
入口で荷物を背負って待っていたら、しばらくして芳乃が帰ってきたけれどなんだかやつれているみたいだった。
私がいない間に何か言われたんだろうか。
「芳乃。どうしたの？何か言われたの？」
「いや……Aちゃん、君のお兄ちゃんは毒舌だね……」
「う、うん……？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かいぶん | 作成日時：2020年2月29日 17時
