1.キヨときよくん ページ1
.
動画の投稿を終え、鼻歌混じりにリビングのドアを開けると、真っ先に目に入った後ろ姿。
ソファで身を縮めるAは、スマホを食い入るように見ている。
〈どうも。プロジェクトメイクオーバーのお時間ですねー……やっぱりねぇ、こういう単発実況?てのも大事かと思いましてぇ、えっと……なんだっけ?ぷろ……ぷろじぇくたー、まけーおめーみたいなゲームを……〉
『……んふふ』
YouTubeから流れるうるさい声に、Aは肩を揺らしながら笑っていて。
どうやら動画に夢中で、俺が来た事には気づいていないらしい。
〈まさか俺がプロメク動画12本目だとは思わないだろうな〉
『ふふっ……また言ってる』
「……そんなに面白い?」
『……うん……面白い』
ソファの後ろに立ってAに声を掛けても、何処か上の空な返事を返されるだけ。
相変わらず、彼女の視線はスマホに釘付けだ。
……なんて言うか。
動画に笑ってくれるのは嬉しい。
動画の反応を間近で見れるのも新鮮だ。
ただ、目の前にいる俺そっちのけなのが、なんっか気に食わねぇ。
何とかしてAの視界に入り込もうと隣に座るけど、にこにこと笑顔を向けるのはやっぱりスマホで。
見つめても気が付かない彼女に痺れを切らして、遂にはスマホを取り上げた。
『ちょっと……きよくん何するの!』
「後で見ればいーじゃん」
『やだ!今はキヨの動画見る時間なの!』
驚異的な速さで俺の手からスマホを取り上げると、わざわざ見逃した所までシークバーを戻している。
再びスマホに向き合ったAの横顔は、わかりやすい程の膨れ面だ。
「おーい」
『……』
〈「なんで12本もやってるのに単発実況なんですか?」って。まぁ、一応理由説明しとくね。〉
「Aー?」
『……』
〈一応理由説明しとくわ……あのー……うるさいっ!しっ!〉
うるさいのはお前だよ
……と、自分の実況に対するツッコミは置いておいて。
完全に不貞腐れてしまったAは、俺に対して無視を決め込んだらしい。
ちなみにこの動画一時間弱あるけど、その間俺は放置って事なんだろうか?
……放置って事なんだろうな。
相も変わらず、隣にいる俺は無視で、動画の俺には笑い声を上げるA。
今日も俺の嫁は、
"実況者のキヨ"に夢中です。
221人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あお(プロフ) - かむさん» コメントありがとうございます!とても励みになります〜!きまぐれ更新ですが、お付き合いいただければ幸いです! (2022年5月9日 0時) (レス) id: 35302002c7 (このIDを非表示/違反報告)
かむ - コメント失礼します!投稿お疲れ様です!このお話、めっちゃ好きです!更新頑張ってください! (2022年5月9日 0時) (レス) @page15 id: 91de7e5fbe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あお | 作成日時:2022年3月11日 10時