【実況者】手を繋いで帰ろう【uszw】 (ページ25)

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───────『ほんとにごめんね』

青くなった唇が微かに開いた。

『実況の邪魔しちゃったよね、約束守れなくてごめん』

青白い顔で弱々しく笑ってみせようとするAに、胸がじくりと痛む。

確かに、約束を破られたのは事実だ。

けど、Aを真冬の廊下で長時間待たせたのは俺の責任。

Aのことはわかってるつもりだったのに。

俺は今まで何を見てきたんだよ。

「そんなこともう気にしてないから。ほら、仲直りするぞ」

目線を合わせるためにしゃがみ込み、「な？」とダメ押しの一言を添える。

静かに頷いてくれたのを確認した途端、もやもやとした気持ちに少しだけ晴れ間が差したような気がした。

「立てるか？」

Aに手を差し伸べると、俺の顔を一度確認してから手を差し出し返す。

触れられた箇所から感じるAの冷たさ、

……いや、体温が下がりすぎて、むしろ触られている感覚がない。

そこで、はたと思い浮かんだのが低体温症。

それは雪山だけの話でなく、東京の冬でも起こり得ると聞いたことがある。

もし……もし、Aが死んだら……

気がつけば思考は悪い方向へと向き、もしもの事ばかりが脳に浮かぶ。

飛躍した考えだとわかっているけど、自分で自分の思考が止められない。

早く、暖めねぇと……

『うっし……ちょっと手痛い……』

苦しんだようなAの声にはっとして繋いだ手を見ると、Aの細い指に握り潰す勢いの力を加えていた。

「あっ、ごめん」

力を緩めるとAの苦悶の表情も和らいでいく。

どうも俺は、Aの事となると周りが見えなくなるみたいだ。