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小気味良いプルタブの音が2つ鳴った後、「乾杯」の声と共に缶をぶつける。
『そういえば、うっしーとお酒飲むの久しぶりだね』
「そうだな……三年ぶり、くらいか？」
『そっか……もうそんなに経つのかぁ』
一口ビールを飲んだAは、こたつ机に置いた缶にそのまま視線を固定する。
そんな彼女の顔を眺めながら、俺は当時の事を思い出していた。
そう、あれは、
最初で最後のAとの飲み会───────
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レトルトの家で実況を撮った後、他の三人は珍しく予定があるからと直ぐに解散になった。
これといって何も無かった俺は、真っ直ぐ家へと帰るため電車に乗り込む。
サラリーマンの帰宅時間と重なり、そこそこ混雑している車内。
開閉ドアの真横に背中を預けながら、"夕飯どうすっかなー"なんてぼーっとしていた。
次はー〇〇駅ー〇〇駅。お出口は、右側です。
車内アナウンスが流れて十数秒後、電車は緩やかに速度を落とし、座っていた人達も疎らに立ち上がる。
ドアが開いたと同時に、降りる人の邪魔にならないよう、俺は電車から降りて道を空けた、
その時だった。
乗車列の先頭に立っているのは、酷く懐かしく見知った顔。
彼女が突如実家を飛び出してからの再会だから、会うのは実に十三年ぶりか。
三十代となった彼女は、パンツスタイルのスーツがよく似合っている。
「…………A？」
思わず彼女の名前を呼んだが、その声は雑踏に紛れて届くことはなかっただろう。
でも、Aの目は俺を捉えて、そして……
『うっしー？』
驚いた顔で、Aは俺の名前を呼んだ。
乗客に白い目を向けられながらも、お互いに見つめ合いながら固まる事しか出来なかった。
暫くして、真横で扉が閉まった後、俺とAを置いて電車は走り出す。
俺が降りる駅はここではないし、Aも電車に乗り込む所だったのに。
「えっ、と……久しぶり……？」
『えっ、あ、うん。久しぶり』
まさかこんな所で会うとは思いもしていなかったからか、再会の挨拶は随分とぎこちないものになった。
でも、Aの顔を見つめるうちにじわじわと実感が湧いてきて。
なんで突然居なくなったんだ、とか。
今は何してんだ、とか。
聞きたいことが次から次に溢れ出てくる。
遂に容量がキャパオーバーになった時、俺の口から出た言葉は、
「とりあえず、飲みいかね？」
だった。
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作者名：あお | 作成日時：2022年3月1日 18時
