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「……ここがお店だったんですか?」
「いや、もっと生き物が多い場所で。この辺は俺らぐらいしか住んでないから」
そうなんですね、と相槌を打って、どこを見たら良いかも分からず少し遠くの窓に目をやった。
わ、と感嘆の声が口から漏れる。
気付かなかったというか、そこまで気が回らなかったという方が正しいのかもしれないが。
窓の外に生えたたくさんの樹木は、色とりどりの花びらで彩られている。不思議、だ。1本の木に、紫や青、赤とか、とにかくたくさん。たくさんの花びらが生っていて、色数が多いのに、不思議と不快な感じはしなかった。むしろそれらは美しくて、気分が高揚する。
思わず息を飲んで、呼吸が止まってしまうくらいには。
「あ、あれ、すごいてすね、お花」
「どれ?」
ずい、となるせさんが私の横に来る。近づいたふわりとした髪の毛からは甘い香りがした。私が指した指の先を目線でたどった彼は、ぱちぱちといくらか瞬きをしたあと私を見て口角をあげた。
「どんなふうに見えてんの」
「え?……色んな色の花が、ぶわって咲いてて、」
「綺麗?」
「綺麗、です」
「……咲月は心がキレーだね」
緩やかに細まったピンク色の瞳はやけに楽しそうだ。
ついつい窓の外に視線が動く私とは対照的に、なるせさんはずっと私を捉えて離さない。
「あの木見るヤツによって見え方が違うんだよ、キレーなものが見えるのは、咲月の心がキレーな証拠なの」
いーね、となるせさんの低い声が鼓膜に響く。
なるせさんたちはどんなふうに見えてるんですか、とは聞けなかった。
一瞬見た花の先、ピンク色の花びらが樹から溢れたような気がした。
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更新通知や、ここに載せる程でない短編とか虚妄とか、小話とか載せたりしようかなと思っています。
あと匿名ツール開設して皆さんとお話とかできたらいいなとか。コメント欄だとどうしても煩雑になってしまうので……。
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@sakura_sono_00
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をわ(プロフ) - こちらも拝見させていただきました!口調がそれぞれ声で想像できるくらい理想ですごく素敵です…!更新応援してます! (1月5日 5時) (レス) @page8 id: ab4027dd5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらのその。 | 作成日時:2023年12月19日 1時