ゆめならば、どうか。【🍎🍥🐑】 (ページ9)

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映り飲み込むぬくもり。ページ9

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ぶわ、と。いい匂いがした。
大きな長いテーブルに並べられた料理に呆気に取られていれば、あらきさんがどうぞ、と柔らかい声を発する。
私よりも先にいただきます、とめいちゃんさんが料理に手をつけて、隣のなるせさんに叱られている。仲の良さそうなやり取りに、いよいよもって肩の力がすっかり抜けた。

雑炊、みたいな見た目のお料理と、木製の小さなスプーンを目の前に置かれた。美味しそうな匂いにつられて、おそるおそる手を合わせる。

「……おいしい」

「あ、ほんと？よかった」

飲み込むのが惜しいくらいおいしい。素直に言葉にすれば、安心したのか、そうじゃないのかよく分からないけれどあらきさんは軽快に笑った。
めいちゃんさんは大皿に盛られたお料理をがつがつと頬張って、一方でなるせさんは小さいプレートに盛られたお料理を神妙な面持ちで見つめている。

「なるせさんそんな顔してもダメっすよ～」

なかなか手をつけないなるせさんに、あらきさんが窘めるように言う。

「なるせは好き嫌い多いからね、しかも全然食わねーの」

ちょっとしか入れてないじゃんね、と私に同意を求めるようにあらきさんが言うから、曖昧に頷くしかなかった。
拗ねたこどもみたいになるせさんがあらきさんから目を逸らす。くすくすと笑うあらきさんはなんだか親みたいだった。

「……みなさん、って」

「ん？」

「お友達なんですか？」

きょと、と3人分の双眸が私をみた。
数秒沈黙が訪れ、今度は仲良くうーん、と首を傾げる。

「ともだち……友達ねぇ……」

「まぁ間違ってはないかも」

「うーん」

「まあ、友達以上家族未満って感じですよ。……いない？そういう人」

いない？と聞かれても。……あんまりいないです、とはっきり言うのも気が引けて、また曖昧に笑った。
コップに注がれたお水がちゃぷんと揺れて、いたたまれない気持ちになってそのままコップに口をつける。ごくんと飲み込んだ水滴で背筋がひんやりとした。

「前は店やってたんだけどね、閉じちゃった」

「……おみせ、ですか？」

「うん、俺が飯作って、なるせが接客して、めいちゃんは皿洗い」

「俺も料理できるからね！？」

「めいちゃんテキトーに作るからねえ、美味いけど毎回味変わるの、お店だと良くないっしょ」