ゆめならば、どうか。【🍎🍥🐑】 (ページ3)

今日:12 hit、昨日:19 hit、合計:7,380 hit

ようこそ。ページ3

*

ふ、と意識が急浮上した。呼吸が止まっていた様な感覚に陥り、思い切り起き上がって咳き込んでしまう。ゼェゼェとなる肺を整えながら辺りを見回せば、自分の体はふかふかとしたベッドの上にあった。汗をかいてしまったのか、服が妙に気持ち悪い。
真横には大きな窓があって、太陽が差してきてまぶしい。
がた、とドアが開くような音がして思わず身が竦む。跡がつく程に服を握れば、目の前の扉から顔を出したのは、ひまわり色の双眸を持つ男の人。

「あ！目覚めた！あらきさーん！」

よく通る快活な声に肩が跳ねた。にこにこと笑うその人は、怯える私を気にすることも無くズンズンと部屋の中に足を踏み入れる。やがて私の真横にあった椅子に腰を下ろすと、骨ばった綺麗な手を私へ伸ばしてきた。

「ひ、」

「んあ、怖がらせてる、ごめんね？」

だあいじょうぶ。
まるでこどもでもあやすように、猫撫で声が降ってくる。何も持ってないよー、と両手をあげるその人は、サロペットのついたパンツスーツに身を包み、襟には鮮やかなオレンジ色の宝石が飾られている。

「起きましたあ？」

ごん。突然の声に驚いた拍子に腕をぶつけた。音だけでも痛い。
意識を失う前にかろうじて見た気がするような、赤い髪をした男性が部屋に入ってくる。後ろにはピンク色の髪の、女の子がいて、ゴスロリチックな服に身を包み、水彩のように淡く桃色が滲んだ瞳で私を見た。

「2日寝てましたよ2日。元気？」

2日
その単語に一気に頭が覚醒する。別れる前に見たお母さんの顔を思い出して、とんでもなく焦った。

「ふつ、っか、帰らないと……！」

「おーおー、慌てなさんな」

ガタガタとベッドから降りようとした私を、赤い髪の人が制止した。冷たい手で肩に触れられて、思わず震えが体を走る。すんません、と悪びれる素振りもなくヘラりと笑うその人の口角からは、真っ白に尖った歯が見えた。
パクパクと口を動かすことしか出来ない私を目の前のその人はケラケラと笑う。

「たぶん、帰れねぇと思うよ」