ゆめならば、どうか。【🍎🍥🐑】 (ページ13)

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■ ページ13

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「ね、A」

ごくん、とご飯を飲み込んで、めいちゃんさんが大きく声をあげる。遠くまで届くような張りのある声が私の名前を呼んだ。
にぱ、と笑う顔が太陽みたい。

「食べ終わったら雪遊びしよ！」

「……ゆきあそび」

「外見てない？めっちゃ積もってんの！」

めいちゃんさんのその言葉に振り返って窓を覗けば、確かに、昨日までは鮮やかな緑とたくさんの色で彩られていたお庭は真っ白な雪で覆われていた。
どうにも理解できそうにない光景にぽっかり開いた口が塞がらない。昨日までは暖かかったのに。
……は、春が、急に冬に……

「どうしたのA、口ぱかーってしてる！」

「だ、だって、急に雪……」

「あー、はは、不思議っすか」

そっかそっか、と笑うあらきさん。指を折りながら「雪だるま作って、雪うさぎ作って……」なんて笑うめいちゃんさんを他所にゆっくりと窓に近付けば、昨日とは打って変わってひんやりとした空気が指先を掠める。

「毎日どんな天気になるかわかんないんですよ、昨日暖かかったのに今日は急に寒かったり。明日は夏かもしれない。Aさんの世界は違うんすか？」

「わ、私のところは……春夏秋冬、時期が決まってましたから……春が終わったら夏が来て、夏が終わったら秋が来て、それが終わったら冬が来て、また、春になって」

「へぇ、そっちの方がいいっすねぇ」

風邪ひかなさそう、とあらきさんが笑う。
風邪という概念はあるらしい。窓から降りてきた水滴が指に滴って、思わず身震いした。それを見ためいちゃんさんがおいでおいで、と手招きをする。
にぱ、とわらった彼が私の両手を大きな手のひらで包み込んで、さむいねぇとこぼす。

「めいちゃん、さん、は」

「めいちゃんがいい」

「……めいちゃんは、雪好きなんですか？」

「違うよちゃんめいガキだから、雪も台風も珍しいもの全部好きなだけ」

「なぁんでそんなこと言うのなるせ！！」

横から言葉を投げてきたなるせさんに、めいちゃんがぱ、と私の手を離す。かと思えばムッとした顔でなるせさんに詰め寄って追いかける。……なんか、ちっちゃい子の鬼ごっこみたいだな。

「あのふたりに構ってたらいつまでも食べれねぇよ、食欲あるなら食べな」

私の手を引いて椅子に座らせたあらきさんの言葉に、いただたきますと小さくつぶやいた。