ゆめならば、どうか。【🍎🍥🐑】 (ページ1)

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はじめまして、くろねこ。ページ1

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＿＿＿＿持って、1年かと

言われた言葉を思い出して、ふぅ、と息を吐いた。冷たい空の下で白く染まったそれに、ジワジワと心臓の辺りが熱を持った気がした。病は気からとはよく言ったもので、自分の残り時間を告げられた途端。母が泣き崩れるのを見た途端。思い出したように体調が悪くなった。
随分前からじくじくと痛むようになった心臓、発作的に起こるようになったそれに呼応するように浅くなる呼吸。原因を知りたくて、病院に行ったらこの有様だ。

感傷気分に浸りたくて歩いて帰ると言っては見たものの、クリスマス当日。すっかりとその色に染まった喧騒の中ひとり寂しく帰るのは気分の良いものでは無いかもしれない。虚しい。周りを見渡せば眩いほどに煌めくイルミネーションと、その周りを囲む恋人たちで溢れている。

「……実感ないなあ……」

クリスマスソングに掻き消されて消えた自分の声に反応するように、にゃ、と鳴き声がした。
足元を見れば黒猫が、ひまわり色の双眸を私に向けている。吸い込まれそうな瞳に時が止まったような気がする。
ぐい、とズボンの端を口で引っ張られ、かと思えば、口を離して路地裏まで走っていった。そのまま、じっと私を見つめてくる。ぞわ、と背中を何かが走った。

「……着いて来いって？」

＿＿＿にゃ

ぐ、と唇を噛み締めて息を飲む。
自分の残り時間がわかっている今、怖いものなどないと思えた。

暗がりの中、黒猫に招かれるように、路地裏へ足を進めたはずだった。
次の瞬間、緑の匂いが鼻をかすめる。びゅう、と強く風が吹いて、思わず目をつぶった。
開いた瞬間には、もうそこは路地裏では無くなっていた。一面に広がる樹木と草花、後ろを見たって、さっきの路地はありはしない。黒猫だけが、相変わらず足元から私をじっと見つめている。
ひまわり色だったはずの瞳は、いつの間にか淡くピンク色になっていた。