4話 ページ5
その夜、黒井は神戸とバーで話をしていた。神戸とは数えるほどしか仕事をしたことしかないがなぜかウマが合い、よく一緒に飲みに行くのだ。
「はあ……」
神「どうしたの、ため息ばっか吐いて」
「いや……神戸さんにだけ話すんですけど……あ、このこと誰にも言わないで下さいね」
黒井は声を潜めて言った。神戸は静かに頷き、黒井の方に少し寄る。
「私、庁内Sに選ばれちゃったんですよ」
意外な一言に神戸は驚いた表情を見せた。
神「なんだって、君が？」
「それが私も分からないんです。仕事は真面目にやってきたつもりですし、これといった不祥事も無いんです」
神戸の前では内部不倫は隠している。というか不倫したあの職員は衣笠さんに強請られるのに疲れ、依願退職している。上の人間にバレるような事はないと思うが……
神「不思議だねぇ」
神戸は呟いた。きっと過去の事を思い出しているのだろう。
神「で、どこに異動になったの？やっぱり特命係？」
「いえ、サイバーセキュリティ対策本部です」
神「へえ、それはまた意外な」
「官僚の方達に特命係はダメだと言われて。私は神戸さんが昔居た特命係、行ってみたかったんですがね」
わざとらしく笑って不安を紛らわせた。神戸も笑っている。
神「……頑張ってね」
そう言う神戸の笑みには哀愁が漂っていた。
「頑張ります」
その後少しの沈黙が流れた。
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作者名：Rei | 作成日時：2023年10月22日 14時
