29話 ページ30
「どこ行きます〜？」
外を歩きながら黒井は聞いた。伊丹は悩んだ様子で上を見た。
伊「ん〜……ああ、おすすめの店あるから行こうか」
「は、はい！」
伊「てか、さっき何話してたんだ？すごく重そうな空気だったけど」
ふと伊丹は黒井に聞いた。黒井は驚いた顔をして伊丹を見る。
「いや……何も……」
そう言って黒井は目を逸らした。
伊「あっ、ごめん……」
少し気まずい雰囲気になりながら2人は歩いて行った。
—————————
「ラーメン屋……ですか」
昼過ぎで混み合っている店を見上げながら黒井は言った。
伊「ええ。キャリア組の黒井さんには無縁かもしれませんが」
伊丹は嫌味で答える。
「ふふっ……無縁ですねぇ……でもこういう所行ってみたかったんですよね」
煽りで返し、笑みを浮かべた。
伊「行きましょうか」
「ええ」
伊丹は慣れた様子でコップに水を注ぎ、メニューを開いた。
伊「何にします？」
黒井は慌てて「同じのを」と言った。伊丹は頷き店員を呼んで慣れた様子で注文した。
「ラーメン、好きなんですけど最近食べて無かったんですよね」
黒井は笑って言う。
伊「俺も女性と食事するの、久しぶりです」
自嘲気味で伊丹も笑って言った。
「伊丹さんに良い女性紹介しますよ」
その言葉を聞いた時、伊丹は考えた後少し顔を赤らめながら微笑んだ。
伊「いや黒井に悪いし、好きな人いるんで」
黒井は伊丹の言葉に驚き、水を吹き出しそうになってむせながら伊丹を見て言った。
「い、伊丹さん好きな人いたんですか」
目を見開いて心底驚いたように聞いた。
伊「そんなに驚きます？」
「驚きますよ。だって……」
そこまで言って黒井は言葉に詰まった。
伊「だって？」
「いや……あんまり女性の事見てないと思ってたんで」
半分愛想笑いで黒井は言った。
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作者名：Rei | 作成日時：2023年10月22日 14時
