忘れてしまえば ページ40
「何を?」
神崎は野上の言葉を待つように、その言葉を最後にして何も言わなくなった。
「……全部ぜんぶ。彼は当時のことが勢いだったのでしょう?」
ぽつり。
ぽつり。
静かに言葉を選ぶように発していた野上だが、それは段々と勢いを増して。
「どうせ彼は当時のことを覚えてないのでしょ?なら良いじゃないですか。私が忘れてしまえば良いんです」
野上は、あの時のことにどれだけ追い詰められているのだろうか。
声を荒げることもせず、抑え込むように野上は語る。
俯いて顔をあげなくなった野上に、どんな言葉を言おうか声が詰まった。
「……あなたは覚えていますか?」
シンとした空間の中で、野上は口を開いた。
“あなた”
それが俺のことを指すのだと気づき、慌てて「何を?」と神妙に言葉を返す。
「あなたは、あの日、あの私を殴っていた瞬間、私に言ったんです」
“何を?”なんて。軽々しく言葉を返すんじゃなかった。
「『お前なんか、死んじゃえばいいのに』って」
野上は俯いたまま、右手で左腕を強く、強く。強い力で摩っていた。
ガンッと頭を殴られるような衝撃に襲われた。
最低だってわかってる。でも、正直に……覚えていなかった。
息が詰まる感覚が、戻って来る。
10人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
碧季@低浮上(プロフ) - マリさん» シリアスなシーンはまだ続くと思います(汗)ありがとうございます!頑張ります! (2016年5月8日 10時) (レス) id: a7605a7da1 (このIDを非表示/違反報告)
マリ - これからも頑張ってください (2016年5月7日 22時) (レス) id: 74ba3d39a2 (このIDを非表示/違反報告)
マリ - すごく泣きそうな気持ちになりました (2016年5月7日 22時) (レス) id: 74ba3d39a2 (このIDを非表示/違反報告)
えみ - 了解! (2016年3月12日 21時) (レス) id: 3329057c38 (このIDを非表示/違反報告)
碧季(プロフ) - えみさん» さすがの私もそれくらいわかりまっせww すまん!他の評価少ない作品なら長々と話しても大丈夫たがら次そっちにコメお願いします…! (2016年3月12日 21時) (レス) id: a7605a7da1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:碧季 | 作成日時:2014年12月20日 21時