トラウマ ページ26
あわたわと狼狽える桐生。そこまではまだ良しとする。
しかし野上は、自分の身に置いて、最も危険である状況を、まだ理解していなかった。
____掴まれた、腕。
神崎や駿ならば何の問題も無い。
覚えてはいるだろうか。
野上は、桐生に植え付けられた“恐怖”がある。
それは世にいう『男性恐怖症』
駿やクラスメイトなど、その程度の男は毛嫌いをするくらい。
しかし発端の桐生とあればどうだ。
相手が普段関わって来ない分、記憶は濃く蘇る。
怒鳴り声。
殴る音。
蹴る音。
叫ぶ声。
倒れる音。
ぶつかる音。
声にならない掠れた音。
変わらず鳴る声。
何一つ欠けることなく全部ぜんぶ鮮明に覚えている。
“掴まれた”ということを理解した時には、もう遅かった。
煩いほど耳に染み込んで響き渡る。
まるで数時間前のように思い出す。
五月蝿い。
煩い。
うるさい
うるさい。
ウルサイ
「……あ、……あ……や、だ」
目の前にいるのは、あの時の相手。
抵抗してもしても無意味だった。
もう痣が消えていたとしても、血が流れ出ることが止まっていようとも、
『記憶』という消したくても消えない“傷”がある。
肺から空気が抜ける感覚。
野上は自分が叫んでいるということすら気にできなかった。
記憶が途切れる最後まで、目の前の困惑する相手は一ミリ足りとも見えなかった。
◇
◇◇
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碧季@低浮上(プロフ) - マリさん» シリアスなシーンはまだ続くと思います(汗)ありがとうございます!頑張ります! (2016年5月8日 10時) (レス) id: a7605a7da1 (このIDを非表示/違反報告)
マリ - これからも頑張ってください (2016年5月7日 22時) (レス) id: 74ba3d39a2 (このIDを非表示/違反報告)
マリ - すごく泣きそうな気持ちになりました (2016年5月7日 22時) (レス) id: 74ba3d39a2 (このIDを非表示/違反報告)
えみ - 了解! (2016年3月12日 21時) (レス) id: 3329057c38 (このIDを非表示/違反報告)
碧季(プロフ) - えみさん» さすがの私もそれくらいわかりまっせww すまん!他の評価少ない作品なら長々と話しても大丈夫たがら次そっちにコメお願いします…! (2016年3月12日 21時) (レス) id: a7605a7da1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碧季 | 作成日時:2014年12月20日 21時