歪情 (ページ9)

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4 - Hokuto side ページ9

yg「確かにその仮説ならあの不自然な外傷のことも筋が通るけど……。」

外傷の位置は側頭部。
部位が部位だけに、殴られた線はかなりあるのではないだろうか。
我ながらなかなかの名推理だなと自画自賛してしまうが、どうも髙地さんは腑に落ちて無さそうな顔だ。

yg「どうやって崖の下に遺体を落とすの？」

髙地さんのその一言に頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。

ま、待てよ……。
何かあるはず、何か……。

hk「……引きずれば良いんじゃないですか？」

yg「痕跡は無かったみたいだけどね。まぁここも一面枯葉だからカモフラージュ出来なくも無いか。」

hk「じゃあいけません？」

やっぱいけるじゃんと思いつつ彼の方を見るが、相変わらず腑に落ちない顔。

えー、まだ何か抜けがあるのかなぁ。
何だろう……。

yg「遺体の写真見ただろ？引きずって落としてあんな上手いこと綺麗に落ちると思う？」

hk「あっ……。」

彼のその一言にすっかり閉口してしまった。
先程見た遺体の写真を思い出すと、いかにも落ちましたよというような姿勢で亡くなっていた。
確かに引きずって落としたらあんな姿勢にはならない。

yg「それに疑われているのは一応子供なんでね、まだ捜査線上に浮かんでいない第三者の可能性も捨てきれないけど。」

hk「そうでした……子供じゃ尚更難しいですね。」

「すみません」と謝ると、髙地さんに「新米刑事にしてはなかなかの推理だったよ」と言われ肩をぽんぽんと叩かれた。

yg「俺も初めて現場に来たけど、実際この目で現場を見てみて事件性無いなって思っちゃった。」

hk「そもそも自ら落ちない限りあの遺体の姿にはなりませんからね。」

yg「でもやっぱりあの外傷はおかしいんだよなぁ……。」

外傷を見ると崖の上で殺害された説で筋が通るのに、遺体の姿勢を見ると必然的に転落事故となってしまう。

矛盾が生じている。
何かがおかしいはずなのに、それが何なのか俺達にはまだ見当すらつかないのが悔しい。