歪情 (ページ41)

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少しの恐怖 - Juri side ページ41

2009年6月13日＿＿＿

京本家で暮らし始めてから2ヶ月半程経った。

俺は中2、きょもは中3。
俺達は同じ中学校だから、登下校はいつも一緒だった。
部屋は隣同士、朝が弱い俺は毎朝彼に起こしてもらっていた。

俺達は昔に戻ったかのように仲良く過ごせていた。
彼の両親からは「やっぱり兄弟みたいだね」とも言われた。
俺は彼と再びそういう関係に戻れて安心した。

だって、彼とは一度疎遠になってしまったから。
中学受験の為に、彼は俺から離れていった。
遊ぶことを犠牲にして、沢山勉強したんだと思う。

でも、彼は受験に落ちてしまった。
だから尚更その後は気まずくて、ずっと彼とは話せずにいた。
学年も違うし、そもそも見かけることも無かった。

だから良かった。
もう一度、彼と関係を作り直すことが出来て。

彼は……きょもは優しいんだ。
いつも俺のことを気にかけてくれる。
家にいる時も、外にいる時も、彼はずっと一緒。

嬉しいよ。
家ではずっと一人ぼっちだったから。
今までの生活が嘘みたいに、明るく豊かになった。

……でも、ちょっと苦しい。
彼の俺への想いが、やたらに強い気がするんだ。

学校から一緒に帰る時は「今日は誰と何を話したの？」とか、「お昼ご飯はちゃんと食べたか？」とか、やけに細かい所までしつこく尋ねてくる。

寝る時は「樹は朝起きれないから」と言って俺の隣で寝ようとしてくる。
確かに俺が朝に弱いのは本当のことだけど、何も同じ部屋で、それも隣で寝る必要は無いんじゃないかと思ってしまう。

そんなこんなで、彼のことが好きな一方で、彼の態度に対して少しだけ恐怖も感じていた。

jr「公衆電話……。」

夕飯を食べ終えた俺は、適当な理由をつけて家を出て公衆電話を探していた。

今日はジェシーの誕生日だから。
もしかしたら彼と電話が繋がるかもしれない。
そう思って、今日まで一度もかけずに我慢してきた。

きょものことを伝えないと。
それに何より、彼が今元気なのかどうかを確認しないといけない。

jr「……あった。」

家から10分程歩くと、今はもう花を咲かせていない緑の桜の木の下に設置されていた。
俺は中に入って、ポケットから電話番号が記されたメモと小銭を取り出した。
その小銭を入れて、記された通りの番号を打って、受話器を耳に押し当てた。

誕生日ならきっと。
……きっと、出てくれるよね……？