歪情 (ページ37)

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3 - Hokuto side ページ37

yg「実は、我々は貴方の叔父を殺害したのはジェシーさんだと疑っています。」

髙地さんは少し強めにそう言った。
まだそこまで話は進んでいないのに、また何か考えがあって言っているのだろうか。

yg「今後、犯行を裏付ける確実な証拠が見つかれば、彼は逮捕されるでしょう。」

すると、樹くん＿＿＿田中さんは一回だけゆっくりと瞬きをしてから、俺達の方をじっと見つめて答えた。

jr「俺は叔父が誰かに殺されるような人だったとは思っていません。彼は事故で亡くなったと信じています。」

yg「仮にジェシーさんが殺害していたとしたら？」

jr「彼に関しては数回会っただけなので特別どうとも思いませんが、叔父が殺されたという事実だけ見ると悲しいです。」

彼は伏し目がちにそう答えた。
実に平凡な、ごもっともな内容だった。

yg「嘘だ……。」

jr「はい？」

yg「じゃあ何故、当時叔父が亡くなったというのに涙一つ見せなかった？貴方の態度は何処か冷静だったと父は言っていた。」

髙地さんが訴えるように彼に向かって言った。
しかし、彼は顔色一つ変えず、色の映さない瞳でこちらをじっと見続けていた。

あぁ、分かった。
髙地さんの父親が言ってた意味。

確かに彼は……。

jr「人前で泣きたくなかったんです、そういう年頃でしょう？」

yg「そんなの、」

jr「俺のこと、疑ってるんですね。」

yg「そういう訳じゃ……。」

jr「大丈夫ですよ、冷たい目で見られるのは慣れてますから。」

彼は笑みを浮かべてそう言うと、背後を振り返った。

jr「すみません、お客さんを待たせているのでそろそろ。」

yg「……ありがとうございました。」

お辞儀をしてドアを閉めた。
その直前、一瞬だけ見えた彼の背中は何処か寂しそうだった。

hk「不思議な人でしたね。」

yg「あぁ……。」

帰りの車では、ほとんど何も発さず沈黙が続いていた。

yg「こっちから試したのに、逆に試された。」

hk「試し？」

yg「ジェシーくんを疑っているって言って反応を試したけど、逆に彼は俺のこと疑ってるんですねって言って俺達の反応を見てた。」

hk「なるほど……。」

彼は俺達を挑発していた。
獲物を狙うライオンのような目で、俺達をじっと見つめていた。

hk「なんか調子狂いますね。」

yg「あぁ。」

hk「でも……。」

でも、一つ。
一つだけ、確実に分かったことがある。

hk「あの人、クロですね。」

yg「……あぁ。」