歪情 (ページ34)

今日:18 hit、昨日:25 hit、合計:55,253 hit

2 - Juri side ページ34

jr「どうして……ッ？」

js「だって、俺達の繋がりが知られた以上、あんまりここにいない方が良いじゃない。」

jr「だからってそんな……。」

js「その方が他人のフリしやすいもの。」

jr「そんな……。」

そんな。
そんなの嫌だよ。

js「はいこれ、電話番号。」

jr「電話……？」

js「携帯買ったんだ。」

jr「携帯……。」

js「やり取りが多いとまずいから、本当に何かあった時に公衆電話からこれにかけてね。」

彼は呆然と立ち尽くす俺の手を掴んで、番号が記されたメモを握らせた。

電話なんて……。
そんなの、そんなんじゃ、駄目だよ。

会えなきゃ駄目だよ。

jr「ねぇジェシー、俺ね、後悔してる。あの夜、ジェシーを置いていってしまったこと。」

js「良いんだよ、だって言ったでしょ？殺したのは俺だって。」

jr「違うよ、殺したのは俺だもん。ジェシーじゃないよ。」

js「ううん、殺したのは、」

jr「ジェシー、俺強くなるから、もっともっと強くて頭も良い人になるから、だから……ッ。」

お願い。
一緒にいて？

刑事なんて怖くないよ。
大丈夫だよ。

何とかなるから。
だから、だからお願い……。

js「ごめん、引越しのトラック、そろそろ来ちゃうんだ。」

彼は「じゃあね、樹。」と言って俺に背を向け歩き出した。

待ってよ。
ねぇ、待って。

まだ聞きたいこといっぱいあるんだよ。

どうやってあの崖から雅人さんを落としたの？
刑事さんには何を聞かれたの？

ご飯はちゃんと食べてる？
夜は眠れてる？

ねぇ、お願い。
俺がジェシーを守るから、だからお願い。

行かないでよ……。

俺の心の声は届かないまま、ジェシーは遠くへ行ってしまった。