歪情 (ページ3)

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14年前 - Hokuto side ページ3

髙地さんが語ったのは今から14年前にある団地の裏山で起きた男性の転落事故の話だった。
当時刑事だった髙地さんの父親がこの件の担当だったらしい。

男性は明け方に崖の下で頭部から血を流してうつ伏せに倒れた状態で発見された。
死亡推定時刻は午後23時、時間帯からして裏山にいるのは不自然であった。
また、裏山は年に一度伐採業者が立ち入る程度で、一般の人が立ち入ることは滅多に無いような場所であった。

人気の無い深夜の裏山、殺害場所としては非常に適している。
その為、当然他殺の可能性も出ていた。
何者かが男性を裏山に呼び出し突き落としたのではないか。
当時の刑事達は皆、事件性を疑った。

しかし、捜査をしていく中で特に事件性を裏付ける証拠が出てくることもなく、遺書等の自殺の証拠となる物も無かった。
警察はこれ以上継続していてもキリがないと判断し、この件を事故として処理した。

hk「まぁ転落死って正直他殺か事故か判断しにくいですしね。」

yg「あぁ……だが恐らく事故じゃない。」

hk「えっ？」

髙地さんは眉をひそめ、テーブルに肘をついた。

事故として処理されたのに事故じゃないだなんて、一体どういうことなんだろう。

yg「不可解な点がいくつかあるんだ。」

髙地さんがテーブルに並べられた写真を指差す。
そこには転落した男性の頭部が写っていた。

yg「この外傷、転落した時に出来たものにしては妙に局部的じゃないか？」

hk「……あぁ、まぁ言われてみれば。」

もう一度写真を見てみると、確かに側頭部のこめかみ寄りにピンポイントに外傷がある。
転落した際に強く打ち付けてしまったのだろうか。

hk「ちょうど落ちた場所に岩でもあったんじゃないんですか？」

yg「それが無かったんだよ、土と枯葉と数本の枝木くらい、辺りには岩どころか石一つ無かった。」

なるほど、確かにおかしい。
あれは土に当たって出来る傷ではない。
もっと硬い物にぶつかって出来るような傷だ。

ふと隣の資料が気になってそちらに目を移すと、「外傷は側頭部一箇所のみ」と記載されていた。
さらに詳しく読んでみると、どうやら男性は高さ約10mの崖から転落したことが分かった。

そんな高さから転落したのに骨折どころか打撲すらしていないのか。
それに加え側頭部の不自然な外傷。

……おかしい。