歪情 (ページ15)

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3 - Hokuto side ページ15

yg「あのー、前にここに来た髙地っていう刑事覚えてます？俺その息子なんですけどー、どうしてもお話聞きたいんですぅー、駄目ですかぁー？」

ここで髙地さんがお仕事スタイルの話し方から一転、スイッチオフのほわほわした話し方に変えてきた。
俺は驚いて慌てて止めに入ろうとするが、彼に手で制止される。

yg「もう一人連れてきた松村くんって子もこの辺住んでいてお話聞きたいみたいなんですよぉー、何とか少しでもお会い出来ませんかぁー？」

近所に響きそうなくらいの声量でインターホンに向かって呼びかける髙地さん。

あぁ恥ずかしい……。
この人、暑さで頭のネジ外れちゃったのかな。
下手したら俺達が通報されちゃうって……。

「あのぉーもしもしぃー？」と何度か髙地さんが呼びかけると、ガチャっと音が鳴りドアが開いた。

「貴方達、近所迷惑でしょう！？」

中からしかめっ面の女性が出てきた。
俺はいても立ってもいられなくなり、慌てて何度も頭を下げた。

うわ、これやばいって。
めちゃくちゃ怒ってるよ……。

「……ここで騒がれても迷惑なので、話は中で聞きます。」

ところが意外にも女性は一言そう言うと、俺達を家の中へ迎え入れてくれた。
思いがけない展開となり髙地さんに目配せをすると、彼はしたり顔で俺に向かって親指を立てて見せた。

うーん、まぁ入れたし……結果オーライ、なのか？

「おかけになって下さい、今お茶を持って参りますので。」

yg「ありがとうございまぁす。」

だからその喋り方やめろよ、と思わずツッコミたくなってしまう。
ほんわかを超えてどこかわざとらしいその口調に何の意味があるのか。
この事情聴取が終わったら絶対に問い詰めてやろうと決めた。

yg「メモ、ちゃんとよろしくね。」

さり気なく髙地さんがボソッと耳打ちしてきた。
「分かってますよ」と返し、バッグから手帳とボールペンを取りだした。
女性＿＿＿京本さんは俺達の前に紅茶と焼き菓子を置くと、正面のソファーに腰を下ろした。

紅茶に焼き菓子……流石お金持ち。

「また騒ぎに来られても迷惑なので、聞きたいことがあるなら今日全部聞いて帰って下さい。」

「答えられることは答えます」と言う彼女。
先程までの顔の険しさは消え去っていてひとまず安心した。

yg「分かりました、ではまず田中樹くんのことから。」

髙地さんがそう言うと、彼女は口をつけていたティーカップをゆっくりとテーブルに置いた。