歪情 (ページ12)

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もやもや - Hokuto side ページ12

yg「ありがとうございました。」

女性から話を聞き終え、再び車に乗り込んだ。
「ちょっと持ってて」と髙地さんから渡されたファイルを受け取って膝の上に置いた。

hk「樹くんの引越し先、どこか知ってるんですか？」

yg「あぁ、ここからそう遠くは無いよ。」

やはり彼は引越し先を知っていたらしい。
これも父親が遺した資料からの情報だろうか。

彼はこの件についてどこまで把握しているのだろう。
早く全てを話して欲しいのに、どうして先に教えてくれないのか。
俺には彼の意図がさっぱり分からずもやもやした。

hk「……あの。」

yg「ん、なぁに？」

hk「なんで俺にこの件のこと、先に全部教えてくれないんですか？」

思い切って尋ねてみると、彼はふふっと笑った。

何が面白いんだ、と口をへの字に曲げて見せると、彼は「まぁそうだよねぇ」と呟いた。

yg「まずね、一気に全部話した所で理解出来ないと思う。」

理解出来ない？
自分で言うのもあれだが、割と頭は良い方だ。
思考力はともかく、記憶力と理解力には自信があるのに。

yg「それに、先に全部話しちゃうと先入観持っちゃうでしょ？」

hk「先入観？」

yg「この先いろんな人に話を伺ったりするつもりだけど、先にその人の情報を知ってるとさ。」

hk「……あぁ、なるほど。」

yg「俺は父さんから聞いちゃってるから仕方が無いけれど、君はまだほんの一部しか知っていない。」

俺なら彼とは違った視点で……ってことか。
うーん、確かにごもっともだ。

yg「まぁ、あとは話すのが面倒臭い。」

hk「はい？」

yg「俺が知っていることを全部話すなんて時間がいくらあっても足りない、てかやっぱ面倒臭い。」

「面倒臭い」を2回も言う髙地さん。
要するにそれが本音だろう。

なぁんだ、そういうことかい。
結構適当な人だなぁ……。

yg「そんな目で見ないでよー、近々俺と一緒に資料全部見てみよ？その時にもっと詳しく話すから、ね？」

髙地さんにむすっとした顔を向けると、急に腕が伸びてきて頭をわしゃわしゃと撫でられてびっくりした。

ちょ、犬じゃないんだからやめろよ！
もう何なの、この人。

hk「運転中なんだからちゃんと前向いて下さい！」

どんな反応をするのが正解なのか分からずとりあえず注意をすると、髙地さんは大口を開けて笑った。
何だか恥ずかしくなって俺は彼にそっぽを向いて窓の外を眺めた。
雲一つない青空に、また鳥が群れをなして飛んでいくのが見えた。