歪情 (ページ1)

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新しい職場 - Hokuto side ページ1

2022年8月＿＿＿＿

hk「あーしんどい。」

じりじりと照りつける8月の暑さに、心も身体も滅入ってしまいそうだ。
まだ勤務前だというのに、ワイシャツは既に汗ばみ肌と密着していて気持ちが悪い。

それにしても今日は稀に見る暑さだ。
昨今地球温暖化というが、温暖化どころか灼熱化なのではないかと思う。

「ストップ、オレオレ詐欺」と赤い文字で記された看板を横目に見ながら自動ドアを通り抜ける。
すぐ左にある階段を上がって真っ直ぐ歩くと右手にあるのが今日からの新しい勤務先。
ドアプレートの「捜査第一課」を確認してからノックした。

hk「失礼致します。」

ドアを開け、中に入って辺りを見回した。
電気はついておらず誰もいない。

あれ？
おかしいな。

世の中はお盆休みだが、警察を含むお役所勤めにお盆休みという概念は無いはずだ。
朝っぱらから何か事件でも発生したのだろうか。

「あれ、もしかして新人の子かなぁ。」

とりあえず用意されているはずの自分のデスクを探そうと辺りをうろちょろしていると、奥のドアがガチャっと開き、中から男性が出てきた。

hk「おはようございます、本日からこちらに配属されました松村北斗と申します。」

「おぉー待ってたよ、こっちこっち。」

背筋をシャキッと伸ばし丁寧に挨拶をすると、男性はこちらに向かって手招きをしてきた。
彼に続いて奥の部屋に入ると、落ち着いたシックな趣のある空間が広がっていた。
左奥にはデスク、その後ろには沢山のファイルが敷き詰められた本棚が並んでいた。

「そこのソファー座ってて。」

hk「はい、失礼致します。」

言われた通り目の前にあるソファーに腰をかけた。
彼は「暑かったでしょー」と俺に話しかけながら戸棚を開けた。

彼は一体誰なんだ。
見た目と話し方からして、俺と同い歳くらいな気がするけど。

随分と高級感のある部屋だなぁと色々眺めていると、デスクにあるプレートが目に入り思わず二度見をした。
そこには「課長」と記されていた。

「コーヒーはブラックで大丈夫かな？」

hk「あっ、大丈夫です、ありがとうございます。」

「はぁい、待っててねぇ。」

「コーヒーそろそろ買い足さなきゃ」とぶつぶつ独り言を呟きながらグラスに氷を入れる彼。
間違いない、彼がこの部屋の使用者、つまりは課長だ。
しかし、自分のイメージしていた「課長」と彼がかけ離れていてどうもしっくりこない。