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晴れて澄んだ秋の空、夕陽が綺麗な時間帯。
イトナは荒っぽく私の手を引いて、ずんずん歩いていく。
その背中は赤く照らされている。
「……イトナ、怒ってんの?」
私が言うと、イトナはぴたりと足を止めた。そしてゆっくりとこちらを振り向く。
「悪い。休み時間のときの会話が聞こえて苛立っていた」
「……もう。私は誰のものでもないんだから、勝手に怒らないでよね」
私は溜息をついて手をふりほどいた。強く引っ張られるものだから疲れた。
「……そうだな。悪い」
イトナはしゅんとうなだれる。本当に犬のようだ。耳と尻尾が見えるのは幻覚だろうか。
しかし、こうしてイトナと一緒にいると思うのだ。イトナとの関係ははっきりさせておかなければ。と。
「それに私、あんたのことフったよね?」
すると、イトナはまるで雷に打たれたかのように硬直して目を見開いた。
「……え?」
こちらも言葉を失ってしまう。私の記憶違いではないはずだ。私は間違いなく、「付き合えない」と言ったはず。
「私はあんたとは付き合えないって……言ったよね?」
「俺はあのとき、フられていたのか……?」
「気付いてなかったの!?」
呆れてまた溜息がこぼれる。なんていうかこいつは……単純馬鹿なのかなぁ……。
「だから私のことはもう、諦めて。悪いんだけど私にとってあんたは『友達』なの。それ以上には見れない」
私が好きなのはカルマで、イトナは私にとって友達だった。それ以上でもそれ以下でもない。
これが、恋愛感情に転がるなんてとても思えない。
「そうか」
イトナは怒るわけでも悲しむわけでもなく軽い感じで相槌を打った。
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るーちゃん - とても良かったです!天才ですね! (2016年6月13日 20時) (レス) id: 05d2391dee (このIDを非表示/違反報告)
銀龍(プロフ) - 夏凪さん» ありがとうございます。いつもいつも一番に応援してくれたのは貴方でした。貴方様も頑張って下さい。 (2015年7月24日 18時) (レス) id: ba8182eb33 (このIDを非表示/違反報告)
夏凪(プロフ) - 完結おめでとうございます!もう、貴方の文に心を奪われました!責任とってください!←今までも、これからも私は貴方の大ファンです!これからも頑張ってください! (2015年7月23日 19時) (レス) id: 44b9b683a2 (このIDを非表示/違反報告)
銀龍(プロフ) - きの子さん» 初期から熱烈な応援ありがとうございました。貴方様の名前は忘れません。ご愛読ありがとうございました。 (2015年7月22日 19時) (レス) id: ba8182eb33 (このIDを非表示/違反報告)
銀龍(プロフ) - 氷翠さん» 応援ありがとうございました。最後まで読んでいただき光栄です。 (2015年7月22日 19時) (レス) id: ba8182eb33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:銀龍 | 作成日時:2015年6月4日 21時