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「いねぇな、イトナの奴」
「どっかに行ってんじゃないの?」
「にしちゃあ不用心だな。鍵もかけねぇで」
「すげー電子部品がゴロゴロだ……」
「吉田……あんたねぇ……」
放課後、私達はイトナの倉庫を訪ねた。てっきりそこにいるものとばかり思っていたが、予想と反してそこは無人だった。
村松が言ったように、扉は開け放たれている。
「はーあ。無駄足じゃない。もう充分でしょう?」
綺羅々は早く帰りたいと言わんばかりに溜息をついた。始めは乗り気じゃなかったが、私も行くと言うとしぶしぶついてきたのだ。
「おいおい。いねーんならさらにおかしいだろ。相変わらず音沙汰ねーしよぉ」
「なんか、前に来たときよりとっ散らかってる気もするし」
私はしゃがみ込んで、散らばっている電子部品を拾い上げた。一昨日来たときは、もう少し片付いていると思ったのだが。
「なんかあったのか?」
「なんかって?」
村松は首を傾げて呟いた。
「また、どっかの殺し屋が絡んでるとか」
ゾクッと嫌な感覚が襲ってきた。共に、以前イトナと捕まったときのことを思い出す。
その可能性もなくはない。
もしまた、あんなことが起きているとしたら……
「んなわけないじゃない。もしそうだとして、イトナをさらってどうしようってのよ」
「知らねーよ。じゃあ他に何があんだよ」
「で、でも連絡取れないままだし……」
考えれば考えるほど不安になってくる。この散らかりようも、誰かと争った跡なのかもしれない。
「どうしよう……」
「探してみっか?」
「はァ? どこをどう探すってのよ。見当もつかないじゃない」
寺坂の発言に対し、綺羅々は辛辣な反応をした。相当苛立っているようだ。
「探そうよ! 本当に何かあったのかもしれないし」
「お、おう……」
思わず必死になって言うと、寺坂は驚いたようだったが頷いてくれた。
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るーちゃん - とても良かったです!天才ですね! (2016年6月13日 20時) (レス) id: 05d2391dee (このIDを非表示/違反報告)
銀龍(プロフ) - 夏凪さん» ありがとうございます。いつもいつも一番に応援してくれたのは貴方でした。貴方様も頑張って下さい。 (2015年7月24日 18時) (レス) id: ba8182eb33 (このIDを非表示/違反報告)
夏凪(プロフ) - 完結おめでとうございます!もう、貴方の文に心を奪われました!責任とってください!←今までも、これからも私は貴方の大ファンです!これからも頑張ってください! (2015年7月23日 19時) (レス) id: 44b9b683a2 (このIDを非表示/違反報告)
銀龍(プロフ) - きの子さん» 初期から熱烈な応援ありがとうございました。貴方様の名前は忘れません。ご愛読ありがとうございました。 (2015年7月22日 19時) (レス) id: ba8182eb33 (このIDを非表示/違反報告)
銀龍(プロフ) - 氷翠さん» 応援ありがとうございました。最後まで読んでいただき光栄です。 (2015年7月22日 19時) (レス) id: ba8182eb33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:銀龍 | 作成日時:2015年6月4日 21時