検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:25,099 hit

227 ページ27

「ふーん。それで逃げ出して来ちゃったんだ」
 「ええ……情けない話ですが」

 私はうつむいた。情けなさすぎて笑える。滑稽だよこの根性なしめ。いっぺん誰かにしばかれてしまえ。

 カルマは笑いながら紙パックのジュースを私に差し出す。イトナの倉庫から帰る途中、ばったり会ってしまったのだ。
 当然逃がしてくれる気はないようで、こうして公園のベンチでさきほどの一件を白状させられる。

 「葵ちゃんてマジメだねぇ」

 私の気持ちなどいざ知らず、カルマはケラケラ笑った。カルマは真面目と正反対の性格に思える。私の気持ちなんてわかるもんか……。

 「だってちゃんとしたいじゃない……こういうことは」
 「んー。葵ちゃんの考えも間違ってはいないと思うけどさ、なんかこう……もっと軽くとらえてもいいんじゃない?」
 「軽くって……それじゃああんた達に悪いじゃない」
 「俺は別にいいよ? 一回どっちかと付き合ってみてさぁ、気に入らなかったら乗り換えればいいじゃん」
 「な、なんて非道な……」

 思ったまま口にすると、カルマはまた笑った。

 「でもそんなもんだと思うよ? 何が正しいかなんて、やってみないとわかんないじゃん。ま、俺と付き合ったら絶対放さないけどね」
 「う……」

 カルマはからかうように微笑んだ。
 言葉を返せずにいると、その表情を崩してストローに口をつける。

 「でもさ、告白されてる男に恋愛相談なんて、葵ちゃんも度胸あるよね。そりゃイトナだって我慢できないわ」
 「え、そ、そうなの?」
 「そりゃそうだよ。俺だって何するかわかんないよ?」
 「変なこと言わないでよ……」

 そっと距離を置くと、カルマは空を仰いで笑う。そんな姿を見て、何も感じない自分に気がついた。今までならば、少し距離が近いだけでめちゃくちゃ緊張してたのに。
 そういえば、私ってカルマに告られてるんだよね? なんでこんなに平然としていられるんだろう?

 ……なんで、イトナにはドキドキして……

 「もう暗くなってきたね」

 カルマが空を見上げて言った。つられて空を仰ぐと、いつのまにか冷えてきて、日は沈みかけている。
 カルマは空になった紙パックをゴミ箱に投げ入れ、立ち上がった。

 「帰ろっか。今日も送るよ」
 「……うん」

 私は重い腰を上げた。

228→←226 イトナside



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (33 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
20人がお気に入り
設定タグ:暗/殺/教/室 , 赤/羽/業 , 堀/部/イ/ト/ナ   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

るーちゃん - とても良かったです!天才ですね! (2016年6月13日 20時) (レス) id: 05d2391dee (このIDを非表示/違反報告)
銀龍(プロフ) - 夏凪さん» ありがとうございます。いつもいつも一番に応援してくれたのは貴方でした。貴方様も頑張って下さい。 (2015年7月24日 18時) (レス) id: ba8182eb33 (このIDを非表示/違反報告)
夏凪(プロフ) - 完結おめでとうございます!もう、貴方の文に心を奪われました!責任とってください!←今までも、これからも私は貴方の大ファンです!これからも頑張ってください! (2015年7月23日 19時) (レス) id: 44b9b683a2 (このIDを非表示/違反報告)
銀龍(プロフ) - きの子さん» 初期から熱烈な応援ありがとうございました。貴方様の名前は忘れません。ご愛読ありがとうございました。 (2015年7月22日 19時) (レス) id: ba8182eb33 (このIDを非表示/違反報告)
銀龍(プロフ) - 氷翠さん» 応援ありがとうございました。最後まで読んでいただき光栄です。 (2015年7月22日 19時) (レス) id: ba8182eb33 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:銀龍 | 作成日時:2015年6月4日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。