一匹狼。【大谷翔平】

理由 ページ28

どれくらいそうしていただろうか。

私は上体を起こし、ポケットの中のスマホを取り出した。

誰かに連絡……。

と言っても、誰に？

家族？

親がこれを知ったら、きっとすごく取り乱す。

弟もまだ小さいし、心配はかけられないな。

他に、信頼できる人……。



かかるかな……。

そう思いながらスマホを耳に当てる。

一回、二回、三回……とコールの回数が増えるごとに不安になる。

かからないかな。

呼吸が荒くなるのを感じる。

はい、とゲンさんの声がした。


「っ、はあ、っゲンさん」

「Aちゃん！？どうしたの！？」


ゲンさんはすぐ私の異常に気づいた。


「た、すけて、くだ、さい……」

「何があったの！？」


私は、思い出すだけで怖くなるさっきの出来事を話した。


「……そっか。その時の辛さは、俺には分かんないくらいだと思うけど、
よく頑張ったね。ちゃんと言ってくれてありがとう。
球団に伝えるときは俺も一緒にいるから」


ゲンさんのその言葉で、私は少し安心できた。

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