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笑ってよ ページ23

大谷翔平side


ホテルに戻ってから、俺はAちゃんを部屋に呼んだ。

明らかに嫌がっていたので、源田さんと一緒に、と言うと来てくれた。

部屋に源田さんとAちゃんが隣同士で座り、俺はその向かいに腰掛ける。

俺は口を開いた。


「Aちゃん、俺は栗山監督からこう言われたんだ。
『月泉に何があったか、聞いてくれないか』って。
言いたくなかったら言わなくてもいい。
でも言ってくれたら、俺は最大限の配慮をするって約束するよ」


栗山監督に言われたのは、嘘だ。

彼女の心を開くためなら、嘘だってついてやる。

Aちゃんは少し黙って、口を開いた。


「最大限の配慮って、何ですか?
もし私が一人にさせてほしいって言ったらそうしてくれるんですか?
二度と話しかけるなって言ったら話しかけないでいてくれるんですか?
……、口だけなら、なんとでも言えるんだよ」


Aちゃんは言ってから、しまった、と言うように口元に手を当て、俯いた。

源田さんを横目でちらりと見ると、源田さんも俺を見ていた。


「Aちゃん、いいよ。一人になって落ち着こう」


そう言って源田さんは立ち上がろうとする。

でもAちゃんは立ち上がらずに俯いたままだった。


「Aちゃん?」

「じゃあ教えます」

「「……え?」」


顔を上げ、立ち上がったAちゃんは、自嘲的な笑みを浮かべていた。

その笑みと月明かりがあいまって、彼女は異様な雰囲気を纏っていた。


「中学校と高校で、人間関係のトラブルがあった。ただそれだけです。
……、満足しましたか?これで栗山監督にも報告できますね。
まあ、嘘でしょうけど」


そう言い放って彼女は身を翻し、部屋を出ていった。

源田さんもそれに急いでついていく。

それでも、俺は座ったままだった。

出ていく前に少しだけ見えた不思議な表情。

それから源田さんの反応。

きっとまだ、彼女は何か隠している。

ねえ、教えてよ。

俺にできることなら、なんでもするからさ。

それで頑張って解決して、

笑ってよ。



全てを知ってから、俺はこの考えを浅はかだったと思うことになる。

嗤ってよ→←なめんなよ?



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月冴-tsukasa-(プロフ) - suzunoさん» ありがとうごさいます!早めに更新できるように頑張ります💪 (8月3日 15時) (レス) id: 74601cbb5c (このIDを非表示/違反報告)
suzuno - めっちゃ面白くて好きです! 更新頑張ってください!楽しみにしています! (8月2日 23時) (レス) @page33 id: c12e1694ff (このIDを非表示/違反報告)
月冴-tsukasa-(プロフ) - ゆいかさん» ありがとうございます!面白いなんて言われたの久しぶりです!更新頑張りますね! (2023年4月13日 7時) (レス) id: 74601cbb5c (このIDを非表示/違反報告)
ゆいか(プロフ) - お話しめちゃ面白くて好きです!更新楽しみにしてます!^^ (2023年4月12日 23時) (レス) id: d180a4fed0 (このIDを非表示/違反報告)
bs - 月冴-tsukasa-さん» 無理せず頑張ってください! (2023年4月6日 16時) (レス) id: 9bc49afac0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月冴-tsukasa- | 作成日時:2023年3月29日 17時

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