君に出会えて【大谷翔平】 (ページ20)

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それからはあっという間だった。

交渉、仮契約、寮の見学、メディカルチェック、本契約、入団発表、そして入寮。

私が寮に持ち込んだのは特にお気に入りの小説。

小５、６年の時に買ってもらって、それからずっと読み続けている。

入院した時も読んだ。

私の心が安らぐのが、野球をしている時とこの小説を読んでいる時だから。

新人合同自主トレが始まる。

同期入団の選手たちはみんなすごくて、刺激を受けた。

そして頑張ろうと思った。

春季キャンプは２軍に帯同。

２軍とはいえプロ野球選手。

やっぱりレベルが違った。

プレー、取り組む姿勢、練習の質。

全てが私がいた高校とは違っていた。

開幕は2軍スタート。

オープン戦ではそこそこの成績を残していたけど、やっぱりプロは”そこそこ”じゃダメなんだ。

いい成績を残して、初めて評価される。

その状態を維持して1軍にいられるようになるんだ。

そして5月。

その人と初めて出会った。

「あれ、関係者以外は立ち入り禁止じゃなかった？」

「何で女がいんの？」

ずっと、そういわれ続けていた。

逆に、言ってこない人が珍しかったくらいだ。

その人はその”珍しい人”だった。

「あ、三日月選手」

「……？」

「初めまして。高校の時から噂でずっと聞いてて……。
かっけーなって思ってたんです」

村上宗隆って言います、と彼は言った。