検索窓
今日:11 hit、昨日:0 hit、合計:122,097 hit

10 ページ12

負けてしまった。

甲子園まであと少しだったのに。

サヨナラ負け。

同点の九回裏、私が投手として登板した。

ツーアウトでランナーは内野安打で一塁にいる。

外野に飛んだ。

完全に打ち取った当たりだった。

けど。

外野手は、ボールを取り損ねた。

普段ならしないミス。

あと少しで甲子園というプレッシャーもあったのだろう。

一塁ランナーは足が速くてホームまで一気に走っていった。

ボールが内野に届いた頃にはすでにランナーはホームまであと少し、というところだった。

私はそれをただ茫然と見つめていた。



帰りのバス。

みんなが黙り込んでいた。

窓の外の、流れていく景色を見つめる。

なんで監督はあそこで私を起用したんだろう。

時々登板するくらいの私を。

どう考えても上策とは言えない。


「三日月」


名前を呼ばれて、びっくりした。

私のことを呼ぶ人なんて全然いないから。

見ると、隣の席に座っている先輩の藤崎蓮さんだった。

私に何かしてくることは全くなかった人だ。


「……はい?」

「……今日の登板の時、監督が言ってたんだけど」


―――三日月は投手としての才能もある。こういう時は抑えられるはずだ。


「って」

「……」


監督が、そんなことを……?


「あと、サヨナラは俺たちのせいだから。自信持って頑張れよ」

「……はい。ありがとうございます」


それは、最初で最後のチームメイトからのエールだった。

11_S55→←9_A17



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (147 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
677人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:月冴-tsukasa- | 作成日時:2023年3月22日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。