25 ページ25
「これ、何?」
夏央くんが見ていたのは、左手首の切り傷だった。
「離して!」
私は夏央くんの手を振りほどこうと手をぶんぶんと振った。
それでも夏央くんは離してくれなかった。
ただまっすぐに、私を見つめていた。
やがて、口を開いた。
「コレ、自傷行為ってやつでしょ?」
私は黙ったままなにもしなかった。
夏央くんは続けた。
「ねえ、辛いことがあるんだったら相談してよ。
一人で抱え込まずに、さ。
心配だから」
その言葉を聞いて、唐突に怒りが噴き出してきた。
何言ってんの?
どうせ相談したって夏央くんにはどうにもできないことだろ。
そう。何も変わらない。
綺麗事言ってんじゃねえよ。
綺麗事いう奴が、私は一番嫌いだ。
「ッるさい!」
そういって夏央くんの手を振りほどいた。
そして夏央くんを睨みつけた。
「なんでそんな私にかまうの?」
自分でも驚くくらい低い声だった。
「ッ、それは……」
夏央くんは下唇を噛んだ。
そして、寮に走って戻っていってしまった。
そして、思った。
自分、酷かった。
感情的になっちゃった。
自己嫌悪。
とりあえず片づけをして、寮に戻った。
その日を境に、夏央くんは話しかけてこなくなった。
私が近くに行くと、逃げるように去っていく。
私の調子はどんどん落ちていった。
そして、
二軍行きを告げられた。
57人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月星葵(プロフ) - 葵音!ありがとう!! (2023年1月7日 20時) (レス) id: faee0afbe9 (このIDを非表示/違反報告)
葵音-aoto-(プロフ) - まさかああなるとは・・・・・・いい意味で裏切られた! (2023年1月7日 20時) (レス) @page48 id: d9cc2f2620 (このIDを非表示/違反報告)
月星葵(プロフ) - 紅葉さん» ありがとうございます!更新頻度は最初に比べて遅いですが、頑張ります! (2022年11月29日 21時) (レス) id: faee0afbe9 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 更新いつも楽しみにしてます! (2022年11月29日 19時) (レス) id: d9e0e07b11 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月冴-tsukasa- | 作成日時:2022年11月9日 0時