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philosophical 31 ページ33





そして。



ミ「ご遺体は、8年前亡くなった糀谷夕希子さん。


ご遺族からの依頼に基づき、
犯人に繋がる証拠を見つけ出す為、



再解剖を行います」



Aは解剖室に入り、中堂の隣に立っていた。



8年ぶりに見る夕希子の姿。


自分と正反対だった、もう2度と見ることのできない、あの…向日葵のような笑顔を、思い出す。



矢「…」



夕希子はよく笑う人だった。それを覚えている。


Aが笑うようになったのは、
夕希子を亡くしてからだ。

笑顔を、作るようになった。


中堂に、軽く寄りかかる。



矢「…っ、」



そして、静かに涙を零した。







矢「系さん、触って下さい?」


系「…あぁ」



夕希子の頬に優しく優しく触れた中堂を横目に、
Aは口を開く。



矢「…私があの夜、夕希姉を止めていたら…
きっとお2人は今も幸せでした。


翔に、早く帰ってきてねって言っていたら、
彼は姉の家には寄らなかった。



…私は、誰かと関わるべき人間ではありません」



系「お前のせいじゃ…」
矢「私のせいではないかもしれません。


でも、どれも1つの仮定でしかないんです。


私が止めていれば、2人は助かった。

系さんも私も、恋人と幸せになる。


そんな…そんな未来もあったはずなのに。


…叶わなかった。

全て、私が招いた結果です」



今にも消えそうな彼女に、中堂は手を伸ばす。


しかし、その手は届かなかった。



矢「私は糀谷夕希子の妹…、

あなたの…大切な人ではありません」



Aが、咄嗟に離れたから…。



系「そんなことは分かっている。

お前は由梨子だ。よく話に聞いていた」


矢「それじゃあどうして!」



由梨子は、中堂を見上げて声を出す。



矢「どうして…そんな優しい目で見るんですか」


系「!」



由梨子の目が、涙で潤む。


居たたまれなくなって、中堂は夕希子に目を移した。

綺麗な顔は、まるで寝ているようだった。



矢「…それでいいんです」



ポツリと、Aの声が聞こえた。


ハッとして顔を上げると、彼女はもう既に解剖室を出て行っていた。



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理音(プロフ) - 続き気になります!更新楽しみにしています! (8月21日 20時) (レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 私も続きが気になります(><)面白くて一気読みしました!くっつくの楽しみにしてます!! (2018年9月12日 21時) (レス) id: ccca1c1412 (このIDを非表示/違反報告)
チコ(プロフ) - Yuriさん» ありがとうございます!はい、只今下書き中です!ただ、まだ時間がかかると思われます…すみませんm(_ _)m (2018年9月10日 6時) (レス) id: 28285d67bb (このIDを非表示/違反報告)
Yuri - いつも楽しく読ませていただいていました!主人公ちゃんが帰ってきた時の話を読みたいです!!ご検討いただけますか? (2018年9月9日 21時) (レス) id: d785c31dd6 (このIDを非表示/違反報告)
チコ(プロフ) - いつさん» コメントありがとうございます!ありますよね、突然。分かります(笑) 1話1話がまぁまぁ長いので一気読みは大変だったと思いますが…嬉しいです、ありがとうございました! (2018年9月9日 6時) (レス) id: 28285d67bb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チコ | 作成日時:2018年9月6日 19時

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