すしらーめん《りく》 隣の部屋のあの人

神頼みなんて。 ページ36

次の曲がり角を曲がればコンビニ、というところで、向こうから見覚えのある青年。

りく「あ、Aさん！」
あなた「りくくん、！」
りく「初詣ですか？そこの神社混んでました？？？」
あなた「そう、初詣。ぜーんぜん混んでなかった。
出店のおじさんがちょっとかわいそうなくらい笑笑」
りく「まじですか笑なんか買って帰ろうかなあ」
あなた「それもいいかもね」
りく「Aさんはこれからどうするんですか？」
あなた「？タバコ買って帰ろうかなって、」
りく「……まだ吸ってるんですか、もう」
あなた「ごめんて」
りく「じゃ、また。」
あなた「うん。またね」

曲がる前にもう一回だけ見たくて振り返ると、ラフな格好のりくくん。
寒くないのかな、なんて笑ってコンビニへ入った。

お目当てのタバコを買って、さっさと暖房で温めておいた部屋へ逃げ込む。
そういえば、ご飯食べてないな。
朝兼お昼ご飯を手早く作って残りは夕飯へ。
家族以外の人と食べる食事の良さを知ってからは、一人の食事が少しだけ、寂しく思うようになった。これは、嬉しい変化、いや…ちょっと困る変化だ。

食後の一服…とベランダでタバコに火をつける。
寒い中でもベランダに出て吸うのは、ちょっとした期待の表れで。
流石にすぐには帰ってこないよねえ、と冷めた目でタバコに口をつけた。
さすがの神頼みも、すれ違って少し話せたくらいで効力切れだろう。
なんて、神頼みなんて端から信じてなかったくせに調子のいいことを考える。

2本目のタバコをねじ消そうとしたとき、何故かばたばたと慌ててベランダに向かう音が隣から聞こえて来た。そんなに慌てるなんて、どうしたんだろう。

ガラッッッと開く窓。
りくくんがりんご飴を2本手にしたまま驚いたような、喜んでるような顔でこちらを見つめる。
りく「Aさんっ、絵馬……！！」
あなた「え、」
りく「違ったらすみません…俺のこと、ですか？」

本人が見るなんて、思いもしてなかった。
恥ずかしいことを書いてなくてよかった、と一人安心する。

あなた「私に友達いないの知ってるでしょ、君以外の。」
りく「ふはは、そうでしたね笑笑」
いつものふわふわ笑顔を見せて、また真剣な表情に戻る。
りく「応援、うれしいです。ありがとうございます。」
あなた「あたりまえでしょ、ていうか、どうして見つけたの」
りく「Aさんの名前が目に入って、つい笑」

その言葉に、どくりと鳴く心臓。
……ほんとに、りく君ってやつは。

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