すしらーめん《りく》 隣の部屋のあの人

冬ですけども。 ページ32

結局タバコはやめられず笑またベランダでりく君と会う日々に。
12月の始まり。
空気はすっかり冷たくて、もう、冬全開だ。
そんなある日。
いつものようにベランダで話していたりく君が、白い息を吐きながら言った。

りく「あのー、おれも忘れてたんですけどね？」
あなた「？」
りく「紅葉、また行くって言ってくれたのになぁ、と思って。」

そういえば。
今年の秋に、紅い山の中で散々はしゃいだ覚えがあるな。
たしか、「秋のうちにもう一回」なんて言った気がする。

りく「もう、冬な気もしますが、行きませんか？」
あなた「まだ、きっとセーフだもんね？笑笑」
りく「そうですよ！なんならまだ11月34日ですよ！！笑笑」
あなた「そうだねぇ笑笑よーしじゃあ行こうか。どうせ私暇だし」
りく「よっしゃ」

あなた「支度してくるから、ちょっと待ってて？」
りく「はいっ！」
あなた「元気が良くてよろしい！笑笑」

この前の、シンデレラの一件から、また私は、身の程知らずだろうと知りながら、
りく君への想い…を、加速させてしまうのだった。

少し着込んで、玄関を出る。
すぐ隣の扉の前で、似たような格好のりく君がいる。
それだけで、少し幸せなのだ。
安上がり、なんて、勝手に笑ってればいいさ。

……まぁ、強がりなんだけども。

りく「やぁっぱ寒いですね笑」
と、隣で笑うりく君。
そんなりく君を見て、ちょっとだけ、この空気に任せて、嘘をつく。
今2人が一緒にいることの、言い訳になるような、無益で優しくて幸せな嘘。

あなた「今年の秋は、すっっごく寒いねぇ笑」
私の意図を汲み取ったりく君も、それに乗る。

りく「ほんとですよね、まだ、11月なのに笑」
じゅういちがつなのにと大事に口にしている。

そんなことを言っていたらもう山の中。
幸いまだ落ち葉は沢山あって、この前来た時のように遊んだ。
時間は沢山ある気がして、ふたりとも、「そろそろ帰る？」の言葉を飲み込んだ。
散々遊んで、体力のない私は限界、でも、帰りたくはないなぁ、なんて。
そんな思いで、落ち葉の上に寝転んだ。
少しして、その50cmくらい隣に、りく君も寝転んだ。

どのくらいか、くだらない話を続けていた。

さすがに帰る時間になって、ゆっくり、ゆっくり歩いて帰る。
別れぎわのドアの前がやけに寂しい。

あなた「またね、おやすみ」

りく「はい、また。おやすみなさい」
２つのドアが閉まる音が、廊下に響いていた。

冬に咲く花。→←帰り道。

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