第０話〜転生〜 ページ7
「目覚めなさい、救国の騎士よ。あなたには、まだすべきことがありますよ」
誰だ？一体誰が私を呼んでくれた？目を開けると、そこには一人の女性が立っていた。周囲は何も無く、ただただ白く広い空間が広がっている。
「あ、貴方は一体？」
恐る恐る問いかけると、女性は柔らかく微笑んだ。ゆっくりと口を開く。
「私のことなど良いでしょう。実は、貴方にお願いがあるのです」
凛とした声。澄んだ瞳が暖かに細められる。その時、記憶がリンクした。まさか、彼女は、彼女は！
「女神様……？ 我がカイル王国を守護せし女神でしょうか！？」
慌てて居住まいを正し、跪く。間違いない。古代の書物で見たままの姿をしている。この不思議な空間も、女神様のお力とあらば説明がつく。
「そうですね、私は貴方の世界を司る女神です。それより、お願いを聞いて下さいませんか？」
「無論です。女神様の命とあらば、必ずや成し遂げてご覧にいれます」
そもそも、女神様から直々に命を賜るなど、これ以上無い光栄なのだから。断る理由はどこにもあるまい。
「ありがとうございます、騎士よ。お願いと言うのはですね、転生して、とある組織を救って欲しいのです」
「とある組織、でございますか？」
「ええ、その組織の名は『高校』。そこに通う一人の少女となり、組織を悪の手から救うのです！」
女神様の目が輝く。その勢いに思わず拝命しかけたが、違和感に気づいた。『一人の少女となり』？私は少女になるのか？
「少女とは、一体どういう訳でありましょう。このままの姿では不可能なのですか？」
「不可能です。その組織には青年しか入れません。また、悪の手は少女に伸びやすいと相場が決まっていますから」
青年しか入れないという組織、『高校』。決まって少女に伸びる魔の手……。知らない言葉、知らない事実ばかりが押し寄せる。
よくわからないが、女神様がおっしゃるならば間違いないのだろう。強いて言うなら、カイル王国と王族、そして戦友も気になるが……。思い切って聞いてみようか。
「あの、私の元いた世界はどうなりますか。私の仲間は、どうなりましたか」
女神様は一瞬驚いたような顔をなさった。しかし直ぐに落ち着いた笑顔に戻り、こう告げた。
「貴方と縁が深い人物も、同じように転生させます。安心なさいね。さぁ、準備は良いですね？」
女神様の言葉に力強く頷くと、意識がゆっくりと離れていくのを感じた────
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