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外から戻ると栗原くんはどこかへ行っていて、ラッキーと思いながら席に着く。目の前は慎太郎くんだ。
「あ、Aちゃん。何か飲む？」
「んー、もういいかな」
今日はそんなに飲んでないけど、酔って栗原くんに絡まれたりしても…と思って遠慮する。
さほど酔ってなさそうな森本くんも「二日酔い嫌だもんなあ」とウーロン茶を頼んだ。
「Aちゃん文学部だよね」
「え？あぁ。よく知ってるね」
「あー、ほら、樹とかから聞いてたから」
「慎太郎くんは？」
「俺は教育学部！」
「へえ、小学校？」
「そうそう！俺こども好きだから。よくわかったね？」
「うん、なんとなくそんな感じした」
バレちゃってた！？と笑う森本くんは、初対面なのにどこか安心感があって話しやすかった。
きっと子どもたちに大人気の先生になるんだろうな。子どもと遊ぶ森本くんを想像する。
「ウーロン茶とお冷です」
忙しいからか店員さんが少し乱雑に置いたグラスが大きな音を立てる。森本くんは嫌な顔をすることなく「ありがとうございます」と言って、わたしの前にお冷を置いた。
「あ、ごめんわざわざ」
「水、冷たい方がおいしいよね〜」
最初に置かれたお冷は氷が全部溶けて、ぬるくなっていた。気遣いのできる人だなと感心しながら「ありがとう」と言うと、慎太郎くんは満足げに笑った。
「Aちゃん戻ってきてたんだ！」
思わず「げっ」と声が出そうになって口に力を入れる。どうやら栗原くんはお手洗いに行ってたみたいだ。ちょっと手が濡れてるのが気になる。
「栗ちゃんおかえり〜！」
「あれ、慎太郎」
慎太郎くんが栗原くんの前におしぼりを置いて、栗原くんがそれを受け取る。
慎太郎くんも気づいたのかな。慎太郎くんをチラッと見ると目があって、ん？と首を傾げる。
「Aちゃん飲んでなくない？まだ水は早いでしょ！」
「あ、いや…」
「栗ちゃんがこの間教えてくれたゲーム最近やっててさ、途中のとこ全然クリアできないんだけど〜！」
また栗原くん絡んできたと思った矢先、慎太郎くんがわたしの言葉を遮るように栗原くんに話しかけてくれた。
助かる〜と思いながら慎太郎くんの話に食いついた栗原くんからちょっと距離をあける。
「慎太郎アレやってんの！？」
「このさ、8番。全然倒せなくて困ってんだよね」
水を飲みながらまた慎太郎くんの方を見ると、慎太郎くんもこちらを見て、いたずらっ子のように笑った。
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作者名：誠沙 | 作成日時：2021年10月9日 0時
