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昨日プレゼンの練習を夜中までしていたせいで頭がぼーっとする。大学に着いたものの、眠くてとりあえずどこかで仮眠しようと座れる場所を探した。


図書館前のベンチは静かでここなら寝ても邪魔にならなさそうだ。イヤホンをつけて背もたれにうつかると、一気に眠気がやってきた。


「Aちゃん!」


突然わたしのことを呼ぶ声がして目を開ける。そこにいたのは見たことあるような、ないような、男の人。やばい、この人誰だっけ。

いきなりだったし眠気がまだ勝っていたのでイマイチ反応できずにいると「この前の飲み会以来だねー」とその人は呑気に言った。


思い出した、栗原くんだ。かなり面倒くさいオーラを放っているはずなのに、栗原くんはどうもこういう空気を汲み取るのが苦手みたいだ。


「この後暇?飯食べ行こうよ!」


「え、」


「この辺で美味しい所知ってんだよね〜。あ!そうだ、この前連絡先交換しなかったじゃん。俺返信遅くても全然気にしないタイプだから、交換しようよ!」


わたしが何か言う前に矢継ぎ早に言葉を並べられて困り果てる。いや、人の話聞けよ、と若干イラついていると、「はい、これ俺のラインのQRコード」と得意げな顔で見せられた。


「いや本当返事しないから」


「全然いいよ!とりあえず読み取りだけして?俺から遊び誘ったりするし!」


これ地獄だなと思っているとタイミング良く「あれ、栗ちゃんとAちゃんじゃん」と知っている声がした。


「よ、慎太郎」


「何してんの?」


慎太郎くんはこっちに近寄って来て、わたしの顔を見た後そう聞いてきた。


「これからAちゃんと飯行くんだー」


栗原くんがそう言った瞬間に思わず「は?」と言う声が出てしまったけれど、その声に釣られるように慎太郎くんはわたしの顔をもう一度見る。



「俺この後Aちゃんとご飯行く約束してたんだけど…」


「え?いや、」


慎太郎くんの発言に困惑する栗原くんに被せるように「うん、昨日ラインくれたもんね」と言って立ち上がる。
慎太郎くんの隣に立って腕を絡ませると、慎太郎くんから手を繋いでくれた。それを見た栗原くんは流石に何か察したようだ。


「あと、悪いけど親しくない人とはライン交換しないんだ。ごめんね」


何も言わなくなったことを良いことにそう言って「行こ」と慎太郎くんの手を引っ張る。


「栗ちゃんまたね」


慎太郎くんの優しくて明るい声に、栗原くんは静かな声で「おう」とだけ言った。




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作者名:誠沙 | 作成日時:2021年10月9日 0時

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