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気がつくとわたしは京本の部屋にいた。京本の好きな漫画が並んでいて、高校時代何度も通った部屋。
部屋に入ってきた京本は金髪ではなく、落ち着いたブラウン。まだ染めていない髪に違和感を覚える。
「今日泊まってく？」
「ううん、帰る」
あぁ、まただ。
これは夢で、4年前のあの日、あの時をまた繰り返す。
わかっているのに、わたしは台本通り、決められた動きしかできない人形のようだった。
自転車に乗って家に帰るわたし。
蒸し暑い空気を切って、少しずつ家に近づいていく。じわり、と浮かんだ汗が妙にリアルだった。
家に着いたのは深夜で、家の電気は全て消えていた。みんなを起こさないように静かに家に入って、自分の部屋に向かう。
階段をゆっくり上がると、自分の部屋の前でひとり蹲っていた。
「…
その子は泣いている。
あの時はわからなかったけど、もうこの光景を何度も繰り返しているのだから間違いない。
ドンッと花火の衝撃みたいに、頭の中で響く鈍い音。わたしは紗凪に押し倒されて、胸ぐらを掴まれている。
何度見ても慣れない。紗凪は明るくて小さい頃からおてんばだったけれど、わたしと喧嘩した時も決して叩いたり蹴ったりしてくるような子ではなかったからだ。
「ふざけんな、ふざけんな！」
「誰かに仕組まれたしあわせで、わたしが満足するとでも思った？」
「あんたのやったことは、優しさなんかじゃない」
「本当に優しい人はこんなことしない。
あんたはただ逃げてるだけの、見せかけの優しさ」
「あんたはわたしの気持ちも、北斗の気持ちも、全部、ぜんぶ、踏み躙ったんだよ！」
目が覚めると異常に喉が渇いていた。紗凪の声がこびりついて離れない。あの時降ってきた涙も、わたしの肌にぴったりついたようなそんな感覚がした。
嫌な夢を見た。いや、あれは夢なんかじゃない、現実だった。
ベットから出て水を飲みに行く。
あつい体に水が沁みて、落ち着きを取り戻す。
二度寝をする気分じゃない。明日は何もないし、眠気が来たらまた昼まで寝ればいい。
本を読もうと適当に引っ張り出してみるものの、なんだか落ち着かなくて映画を観るためにテレビをつける。
机の上に今日借りた緑のハンカチが見えた。
頭の中で再生される花火の音が、つけたテレビの音が、その瞬間波の音にかき消されて慎太郎くんの横顔を思い出した。
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作者名：誠沙 | 作成日時：2021年10月9日 0時
