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「おはよ」


見慣れた金髪に声をかける。周りの女の子たちが羨ましそうな顔でこちらを向いた。
君たちに言ってないのに、と半ば呆れながら隣に座る。


「おはよ。今日寒くね?」


「京本の肌見たらもっと寒くなった」


「は?意味わかんね」


笑うとさらに消えそうだな、なんて思う。
ノートを開くと京本は机に突っ伏して大きく息を吐いた。


「寝るの?」


「ノートよろしく」


「待って無理、わたしも眠い」


「ふざんけな、この前俺がノート取ったじゃん」


そういえば前回は完全に寝ていて、京本のノートを写した。何も言い返せずにいると、京本はそれでいいんだよと言うように鼻で笑った。


教授が講義室に入ってくるのと同時に後ろから忙しない足音が聞こえる。女の子たちがまたこちらの方を向いた。


「あっぶねー。セーフ?」


「樹、そこ荷物置いてる」


「いいじゃん。ほら、きょもの隣空いてるからそっち置いて」


わたしと京本の荷物を退けて隣に座ってくるピンク頭は眠そうに大きな欠伸をした。あくびが移って思わず口に手を当てる。


「あ、A。今日の飲み会来る?」


「えー、わたし居てもいなくても一緒じゃん」


「頼む!今日栗原がAのこと口説くって言ってて面白そうだったからさあ、連れてくるって言っちゃったんだよね」


「とても正直だね君は」


てへっという効果音が似合いそうな顔をする樹に思わず感心する。ここまで全部言っちゃうの、逆にすごいよ。


栗原くんは大体あのグループにいるってことはわかるんだけど、まだ顔と名前が一致してない。今日行ったら面倒くさそうだなあと顔に出てしまったのか、樹は眉を顰めた。


「今日の会場、Aが好きな“雨音”!食い放題飲み放題!俺が奢る!どう!?」


「うっ」


わたしが大好きなお店“雨音(あまおと)
お洒落な店内で楽しめるお肉とお酒。オーナーのひとみさんはとても明るくて面白い大好きな人。


それを出されると弱いなあ、と思いながら熱烈な視線を送る樹と必死に目を合わせないようにする。


「きょもは?絶対面白いもん見れるから!」


「めちゃくちゃ見たいけどダルい」


「きょも来てよ〜俺が奢るからさあ!」


「何時から」


急に起き上がって乗り気になる京本に呆れつつも、雨音なら行ってもいいかなってなる自分もゲンキンなやつだ。


「サキも呼んだから、Aお願い!」


「…帰りアイスもつけてね」


「サンキュ!」



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作者名:誠沙 | 作成日時:2021年10月9日 0時

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