今のキスはカウントしない！

8 ページ8

｢…あのさA、ゆづ｣


いつものけろっとした瞳とは違い、じとーーーっと重たく私を見つめる佳菜子。


｢何？｣



｢さっきから何やってんの？｣



佳菜子の言う“さっきから何やってんの？”とはきっと羽生と私が両手を握りあってることだろう。


…ううん待って。私は握ってない。羽生が勝手に握ってるんだ。


｢羽生が離してくれないの｣


｢だって上田の手あったかいんだもん｣


さらにぎゅう〜っと手を握ってくる羽生。
もうかれこれ10分ぐらいこんな感じ。

｢相変わらずバカだね｣

佳菜子は呆れながら言うとまたリンク中央に滑っていった。


空気中に出された私の手も羽生の手も、もはや氷動揺。感覚が鈍くなるほど冷えきっていた。


こんなことしていたら、普通は私と羽生はそういう関係？っと疑いたくなる人も出てくるだろうけど、案外そうでもない。


私と羽生の仲の良さは友達止まりってことをファンの人もマスコミも知っているから。


ある日、マスコミの誰かの質問。

｢上田選手と羽生選手はお付き合いされているんですか！？村上選手と上田選手は恋の方でもライバルですか！？｣


っと興味深そうに聞いてきた。そしてほかの報道陣も一斉に私と佳菜子と羽生に輝かしい視線を向けてきた。


真っ先に口を開いたのは佳菜子だった。

｢嫌ですよ、あんなナルシスト。Aはスケートに関して私のライバルには及びません。｣

次に口を開いたのは私

｢私も嫌です、あんなえのき男。佳菜子より上を目指してるんでライバル視してないです｣

そして最後に口を開いたのは羽生

｢僕もカナみたいな男らしい女や上田みたいに意地悪な女嫌です。｣


3人がお互いを否定。

このインタビューはネットで取り上げられ話題に。

その後、私達に関して恋愛関係かどうかの質問はパッタリなくなった。

今や“3人兄妹”と呼ばれる。


でも佳菜子と羽生は本当に仲がいい。
お互いどう思っているんだろう。

もし私がいて、2人が遠慮し合ってるなら申し訳ない。


｢ねぇ。羽生｣


手を握ったままの状態で羽生の顔を軽く見上げると羽生は口角を上げて可愛らしく私を見下ろす。

｢何？｣

羽生のこの可愛らしい笑顔は好き。

｢羽生って佳菜子のこと好きなの？｣


そう聞くと羽生のさっきまでの可愛らしい笑顔は崩れた。





･

9→←7

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す