今のキスはカウントしない！

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その後の羽生の演技を私はあえて見なかった。
リーザにもトレーナーさんにも見なくていいの？っと何度も聞かれたけど私は迷わず見ないと答えた。


羽生がこの状況でどんな演技をするのか、今の私には関係ない。
私はいつもの私の演技をするためにも、いつも通りのルーティンを行う。


誰の演技も見ず自分のことだけに集中しなくてはいけない。


けれどそんなことを思っているはずなのに、羽生の演技後暫定１位という速報を聞いてすごく嬉しかったし涙が出そうになった。

普段は鬼コーチもその時だけは私の肩をそっと撫でてくれた。
“結弦もがんばったからAも頑張らなきゃね”っと言うコーチに何度も深く頷いた。


羽生は演技後すぐに病院へ行った。
結局その後コフトンが1位をとり羽生は２位という結果だった。
あの怪我をして2位だなんて…流石だ。


私も頑張ろう。気を引き締め直して演技に挑む。


『 上田Aさん 日本！！』


私の名前と国名がアナウンスされ会場は歓声に包まれる。私はコーチと握手をしてリンク中央へ滑る。


余計な事も考えずに滑る。
音楽がかかるともう私の世界だ


1人でも多くの人の心に残る演技を、なんて小さな夢は掲げない。
ここにいる観客、選手、ジャッジ全ての人の記憶に残るような演技をしてやる。


そう思いながら、私は無我夢中で演技をした





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