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練習終わり結弦君と私は寒い雪道を踏みしめて歩いて帰る。
特に話すこともなくお互い時々「寒いね」っと言い合う。
「寒いね」
私が4回目の「寒いね」を口にした時羽生の返事は「寒いね」でも「うん」でもなかった。
「…もうすぐ中国杯だしカナダに戻るね」
オーサーの元で最後の追い込みをすると羽生は言った。
私は少し息を深く吐いた。
「…そう」
私はそれ以上返事はしなかった。話題を探そうと冬の寒空を見上げ星を探すが星なんて見えない曇り空を少し嫌った。
「…次合う時は試合の日だ」
私がそう言うと羽生は「うん」っと言った。
しばらく会えなくなるのに会話続ける気ないのかな〜。っと思ってると羽生は私の手を握る。
「やっぱあったかいね。上田の手は。」
「相変わらず羽生の手は冷たいね」
いつもなら離してというとこだけど今日は特別。
羽生がカナダに戻るから
元々カナダを拠点としているスケーターだ。
しょうがないのは分かっているけどやっぱり寂しい。
「…少しは寂しいって思う?」
まるで私の心を読み取ったような物言い。
だから私は全く聞こえてないフリをする。
すると羽生は少し首をかしげた
そしてあっという間に家の前。
「…じゃあね上田」
「またね羽生」
じゃあね、なんて言ってるくせに言葉とは裏腹に繋いだ手を離そうとしない羽生
いつもなら早く離してと催促するが、今日は言わない。
「…羽生」
離してとは言わないが、私は羽生の名前を呼ぶ。すると羽生は名残惜しそうにスルッと手を離し数秒視点を定めずぼーっとする。
「頑張ろうね」
私がそう言うとようやく羽生は笑顔になる。
その笑顔を見れて私は嬉しいようで少しせつない気持ちになった。
一生の別れじゃないのに何をこんなに寂しがっているのかな。
じっと羽生を見つめる。すると視線が合う。
そして私をギュッと抱きしめる羽生。
「行ってくるね」
そう呟き終わると羽生は私から離れて目を合わさずに背中を向けて帰っていく。
スケーター同士でのハグや手を繋ぐことは異性同士でも珍しくない。
真央や羽生も普通にハグもしているし、
手もつないでいる。
ごく普通のことだと分かっている。
だから普通すぎて何故か心は少し物足りなく感じたと同時にキスされなかったことに少しホッとした自分もいた。
「何この気持ち」
消化しきれない不思議な感情を胸に抱えながら私は家の中に入った
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星奈子(プロフ) - はるすけさん» はるすけさんコメントありがとうございます!褒めていただけて嬉しいです(*^^*)これからも更新していきますのでぜひまた読みにいらしてください(^^)! (2016年4月25日 7時) (レス) id: cef4b70ce1 (このIDを非表示/違反報告)
はるすけ(プロフ) - 凄く面白くてドキドキしました。続きが気になります! (2016年4月23日 22時) (レス) id: 0afe61d9c2 (このIDを非表示/違反報告)
星奈子(プロフ) - 智枝さん» 智枝さんコメントありがとうございます!笑っ そのじれったさがなんともいえないんですよね~!笑っまたぜひ読みにいらしてください! (2016年3月15日 21時) (レス) id: b27b6b9bf6 (このIDを非表示/違反報告)
星奈子(プロフ) - 鹿さん» 鹿さんコメントありがとうございます!そう言っていただけるととても励みになります!これからも楽しんでいただけるような作品にしたいと思います!ありがとうございます! (2016年3月15日 21時) (レス) id: b27b6b9bf6 (このIDを非表示/違反報告)
智枝 - 男からすると、案外単純そーなのに意外と掴めない女ってのは良いんだよねぇ〜(笑)無意識たまらんね〜 (2016年3月15日 8時) (携帯から) (レス) id: 8a519c5c92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星奈子 | 作成日時:2016年1月9日 0時