【はたけカカシ】 運命はこの手の中に ページ10
何となく、そうなんじゃないかとは思って居た。
その方が、良いとも思って居た。
『私、あの人の所に行くから。』
「…そう。」
『忍も辞める。 普通の女になるの。』
「普通の…ね。」
それは、一番彼女には似合わない言葉だった。
いつだって一線を画していたA。
俺なんかより数倍強くて、要領も良かった。
彼女にこそ、天才という言葉が相応しいだろう。
『カカシは火影になるんでしょ?』
「まーね。 どっかの誰かさんは里を出ちゃうみたいだし?」
『私だって嬉しかったわよ、お声がかかった時は。』
でも決めたの。
そう言った彼女の瞳には、ハッキリと決意の色が浮かんでいた。
本来は、Aが火影に就く筈だった。
だが、話が来た時には、既にどこぞの大名の元へ嫁ぐ事が決まっていたのだ。
…俺には何の相談も無しに。
「相変わらず冷たいねー、お前は。」
『何よ、お互い様じゃない。』
「…ま、それもそうか。」
『…ね、カカシ。』
何? と振り向いた瞬間、唇に柔らかな感触がした。
…全く何だかねーこの子は。
どうしてこう、最後まで人の心を掴んで離さないのだろうか。
「愛してる。」
『…私も。 愛してた。』
その言葉を最後に、彼女は姿を消した。
後に彼女から、子供が産まれたと手紙が来た。
同封されていた写真には、仲睦まじく笑いあう夫婦とその子供の姿が写っていた。
子供はAに似て整った顔立ちをしていて、髪は特徴的な色をしている。
例えるなら…そう。
あの日見た、どこまでも広い夜空にぽつんと輝く、月の様な銀色だった。
「カカシ先生。」
「おー、サクラ。 どうしたー?」
「あの、これ…。」
そう言って、気まずそうに封筒を机に置いた。
「ん、ありがとね。」
「…Aさん、本当にもう戻ってこないんですか?」
我が教え子ながら痛い所をついてくるじゃない。
全く誰がこんな風に教えたんだか…って俺か。
「私、信じてますから。 Aさんは戻ってくるって。」
「…そう。」
「先生だってそうでしょう? だからお見合いだって…」
「さーてと、そろそろ行こうかな。」
「えっ?」
「ちょっと大事な用があってね。」
「あ、ちょっと!」
悪いね、サクラ。
でもきっと、後で許してくれるだろう。
何でって? それは…
『ただいま、カカシ。』
「おかえり、A。」
一度は運命に引き裂かれたけど、今ならその運命だって変えられる。
変わらぬ想いを、その胸に持ってさえいればね。
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作者名:青井リボン | 作成日時:2017年3月19日 2時