Butterfly -tkin- 《1》 (ページ33)

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雄也side

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雄｢今日は本当にありがとね、伊野尾くん｣

慧｢全然、むしろちょっと楽しかったし笑｣

雄｢じゃあ、｣

慧｢うん｣

ご馳走様でした、と
おばさんにも頭を下げて、

すっかり暗くなった夜道を歩き出す。

温かい出来たてのご飯を、
信頼出来る人たちと一緒に囲んで、
なんでもない話をしながら食べて。

そんな幼い頃の記憶が胸に浮かんで、
ほんの少しだけ、しんみりとしてみたり。

こんな風に髪を明るく染めたり、
痛いの嫌いなくせにピアス開けたり、

こういうのも全部、
本当は大人に構ってほしくて
やってんのかなぁ、なんて

今更ながら自分の本音を探す。

…そうじゃなくても、きっと
本当はまだ分からないだけなんだ。

" 自分 " がこれから何をしたいのか、
どんな風に生きていけばいいのか。

もう大人が引いたレールの道は止まって、
そこからは自分の足で

歩いていかなきゃいけないって
周りはうるさく忠告するのに。

どれが " 自分 " の道なのか、
…分からないから不安なだけで。

でも本当はこんな狭い世界じゃなくて、
無数の未来に続く分岐点に立ち止まるのは

俺だけじゃなくて、薮くんも光くんも、
有岡くんも、…伊野尾くんも。

雄｢…みんな同じなのかな｣

ふと脳裏に映った見慣れた顔ぶれに、
胸に浮かんだ苦くて重いモヤが

夜空の星のまたたく随に
吸い込まれるように消えていった気がした。

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