Butterfly -tkin- 《1》 (ページ48)

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雄也side

雄｢それ、どうしたの？｣

腰を屈めて知念と目線を合わせる。

侑｢人混みの中歩いてたら、
人とぶつかったはずみで落としちゃって…｣

慧｢そのために一人で探してたの？｣

侑｢だって、僕のために
涼介が取ってくれたやつだから…｣

話を聞けば、山田から
射的で取ったそれを貰ったらしくて。

人の波にのまれて落としてしまったのを
必死に探していたら
山田達とはぐれてしまったと。

──くそ、なんて可愛い愛なんだ
泣けるじゃねぇか…。

慧｢もう、山田も裕翔も心配してたんだから。｣

帰るよ、と知念の背中を押して、
知念を真ん中に三人で歩き出す。

俺は、彼みたいに人を想って
何かに必死になったことなんてあっただろうか。

もう辺りの屋台には人も少なくなって、
みんなが花火を見るために
海辺へと集まりだしていた。

.

涼｢知念！｣

裕｢高木くん、見つけてくれたんだ！｣

知念を連れて戻れば、
遊びもしないでじっと待っていたらしい
山田がすぐに知念を抱きしめた。

侑｢涼介がくれたの、汚しちゃったの…｣

涼｢そんなん別にいいのに、｣

ごめんなさい、と堪えていた涙を
溢れさせて、知念がグズりだして。

裕翔も困ったように笑いながら
その小さな背中をさする。

涼｢もうすぐ花火だよ。

一緒に見に行こ？｣

裕｢知念も泣かないでさ、｣

山田と裕翔に励まされて
ふふっ、とすぐに知念も笑顔を取り戻して。

慧｢俺らも行こっか、たかぎ｣

潮の香りをふわりと感じた。

雄｢…うん、｣

.