うみとゆき -tkin- (ページ49)

今日:13 hit、昨日:5 hit、合計:81,418 hit

48 ページ49

雄也side

慧｢…来年のこの日も、
二人でここに来れるといいね。｣

雄｢うん、｣

握り返された手の温もりが、
潮の香りと一緒に春の日を窺わせて

俺もぎゅっと、その手を握った。

約束する、必ず俺がまたここに
連れてきてあげるから。

その時はもっと心の距離を近づけて、
また大好きなその笑顔を見せてね。

あの日あの宙を舞った雪も、
それと一緒に積もっていく想い出も全部

受け止めきれないほど愛しくて、
そのひとつひとつは大事な贈り物だった。

思えば俺はこんな大切だと思える仲間を
愛しく想う気持ちもしらないで

恋しい気持ちがあとどのぐらい積もれば
その春の日が来るのかなんて

そんな風にただ待ってるだけの自分で。

そんな奥ゆかしい自分を憎んだあの日、
やっとここに、自分の居場所を
見つけた気がしたんだ。

10年前の誕生日の日、吹き消したロウソクの火と
そこで初めて見えたメンバーの本音。

それが俺をこのグループに留めてくれた
最大の理由で、最高のプレゼントだった。

『誕生日おめでとう、たかぎ』

｢ありがと、…伊野尾くん。｣

伊野尾くんと繋いだ手が潮風に吹かれて
またひとつ、脳裏に記憶として焼き付いた。

.