うみとゆき -tkin- (ページ15)

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雄也side

伊野尾くんの首にそっと手を置いて、
ギリギリまで顔を近づけて

結局二人とも照れて笑うのが
いつもの終わり方。

光くん達が隠してくれてる間に
俺が着替えるのに遅れてたら、

｢たかぎ早く早く！｣って
誰よりも俺を楽しんで笑う。

.

だから、伊野尾くんが俺のために
冷えた手をお湯で温めてから
ピアノを弾いてくれてたなんて知らなかった。

なんでそれを、俺にずっと黙ってたのか
なんで俺はその事にずっと気づかなかったのか

いつも強がる伊野尾くんのことだから、
きっと言えなかったんだって思ったら

雄｢伊野尾くんっ｣

思わず伊野尾くんの細い身体を
折る勢いで抱きしめていた。

慧｢ぎゃっ｣

雄｢ありがとね、いつもいつも｣

慧｢……意味わかんないよ？｣

ほぇ？って言いそうな顔して。

雄｢俺全然気にしてあげられなかったから｣

慧｢なにが、｣

雄｢……なんとなく。｣

慧｢なに、それ笑｣

本人が言ってこなかったのは、
自分が頑張ってる事に気づかれたくなかったから。

だから俺はやっぱり知らないフリをして、
少し赤らむ伊野尾くんの頬をそっと撫でた。

いつも毒ばっかり吐くけど、本当は誰よりも
優しい伊野尾くんが、俺は大好きだ。

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