8話 ページ8
その日の夜。
私はイルミお兄ちゃんにされたことが頭から離れなくて、なかなか眠れずにいた。
あれって……キス、だよね。
未だに唇の感触が残ってるところをそっと触る。
お兄ちゃんの唇、冷たかった……。
って何考えてんの私!
火照った顔を冷まそうと水を飲みに行くと、書斎から灯りが漏れていた。
そっと覗くと、お兄ちゃんが椅子に腰掛けて本を読んでいた。
「……A? こんな時間にどうしたの」
「ちょっと眠れなくて……」
お兄ちゃんは本を机に置くと、指で自分の膝をトントンと叩く。
……ここに座れってことかな。
シ、シツレイシマース。
謎に緊張しながら座ると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「Aはあったかいね」
「お兄ちゃんが冷たいんだよ」
「そう?」
「そうだよ。だってキスした時だって……」
そこまで言いかけてハッとする。
「な、なんでもない」
「言ってよ。気になるじゃん」
「……その、お兄ちゃんの唇が冷たかったなって」
「嫌だった?」
「い、やではなかったけど……急にされてびっくりした」
「じゃあ次からちゃんと言うよ。キスしていい?」
違う! そういう問題じゃない!
でも「だめ」なんて言えなくて、私はコクリと小さく頷いた。
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作者名:あおい | 作成日時:2021年10月2日 12時